乳癌の個別化治療にサブタイプ分類と予後予測因子は不可欠である
現在の乳癌治療では,生物学的サブタイプによって治療戦略を組み立てる考えが主流となった
マイクロアレイ技術を応用した発現解析アレイの登場により,網羅的な遺伝子発現解析が可能となった
網羅的な遺伝子発現解析により,乳癌はintrinsic subtypeと呼ばれる4つの生物学的サブタイプに分類された
網羅的な遺伝子発現解析により,様々なmulti-gene assayと呼ばれる予後予測因子,効果予測因子が開発された
乳癌治療における個別化とは何か。それは,「治療が必要な症例に過不足のない治療を行う」ことであると考えられる。そのためには,①どのような性質の乳癌であるのか,すなわち,どのような治療が有効な乳癌であるのか(サブタイプ分類),②どの程度のリスクの乳癌であるのか(予後予測因子),を知ることが必須である。
St. Gallen乳癌国際カンファレンスのコンセンサス会議においても,腫瘍径やリンパ節転移などの臨床病理学的因子のみで治療が決定されていた時代から,徐々にターゲットやサブタイプを指向した治療へと変遷がみられ,2011年の第12回コンセンサス会議からは遺伝子発現解析に基づいた生物学的サブタイプ(intrinsic subtype)に準じて症例を分類し,治療戦略を組み立てる考えが主流となった1)。
本稿では,乳癌の個別化治療に必須であるサブタイプ分類と予後予測因子について,その基本から概説し,今後の展望について述べる。
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