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自家脂肪注入による乳房再建の今後の展開について

No.5132 (2022年09月03日発行) P.47

山本直人 (自治医科大学附属さいたま医療センター 形成外科教授)

吉村浩太郎 (自治医科大学形成外科教授)

登録日: 2022-09-01

最終更新日: 2022-08-30

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  • 2022年度の診療報酬改定で自家脂肪注入が新設されました。今のところ適応疾患は限定的です。
    今後,同術式が乳房再建へ適応拡大された場合に乳房再建がどのように展開していくのかについて,自治医科大学・吉村浩太郎先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    山本直人 自治医科大学附属さいたま医療センター 形成外科教授


    【回答】

     【乳房再建の標準治療として位置づけられる】

    2022年度の診療報酬改定で自家脂肪注入が新設されました。注入した脂肪量により所定の点数が算定されますが,100mL以上の項目もあり,この大容量については,将来の乳房再建での採用を意識したものと思われます。脂肪移植は,過去20年で組織生着の理論が確立し,それに基づいた外科手技の改良により,高い治療結果が安定して得られるようになってきました。

    脂肪移植の重要性は,皮下組織の体積を増やすだけでなく,病的組織の予備機能(治癒能,伸展能,酸素分圧)を改善するところにあります。特に乳癌治療では,放射線治療を受けた組織や異物や手術に伴う瘢痕やカプセル拘縮に対して,他の治療法では得られない効能があります。

    従来の皮弁法では侵襲が大きく,また現在中心となっている人工乳房(乳房インプラント)による再建は異物反応による影響が一生続くことになります。乳癌手術後の欠損のタイプに応じた治療戦略が必要です。脂肪移植では1回の治療で再建できる体積が限られているため,複数回の治療が必要であり,一連の治療ステップの中で,人工物や他の外科手技をどのように組み合わせていけば理想的な乳房が再建できるのか,という治療戦略が完成に近づいています。脂肪は主に腹部,腰部,大腿などから最低必要量を吸引採取します。

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