乳癌以外の乳房に発生する悪性腫瘍としては,悪性葉状腫瘍,乳房肉腫,乳房悪性リンパ腫がある。また,きわめて稀であるが,放射線治療後に発症する乳房血管肉腫や長期リンパ浮腫に続発するリンパ管肉腫(Stewart-Treves syndrome)がある。
乳房肉腫は乳腺の悪性腫瘍の中で1%以下ときわめて稀な疾患であり,悪性葉状腫瘍とほぼ同様に,外科手術による完全切除が原則であることから,本稿では割愛する。また,乳房悪性リンパ腫は,リンパ腫としての治療が原則となるので,本稿では割愛する。
葉状腫瘍は30~50歳代に好発し,急速増大する境界明瞭な乳腺腫瘍である。葉状腫瘍の発生頻度は全乳腺腫瘍中0.3~0.9%と報告され,そのうち悪性葉状腫瘍に分類されるものはさらにその16~30%と非常に稀である。
葉状腫瘍は,線維性間質の増生の優位な線維上皮性腫瘍である。間質細胞の異型性(細胞密度,核分裂像,核異型度)により,病理学的に良性・境界悪性・悪性の3つに分類される。遠隔転移は稀だが,その中では肺転移が多く,その頻度は約20~30%である。再発転移後の予後はきわめて不良である。
悪性葉状腫瘍の治療の基本は外科的切除である。乳房部分切除か乳房切除が推奨されている。腋窩リンパ節郭清については,葉状腫瘍はリンパ節転移の頻度が低いことから,推奨されていない。また,希少疾患ゆえに,術後放射線治療,術後薬物療法のエビデンスは乏しいが,軟部肉腫に準じた治療が奏効する可能性がある。
そのうちのひとつが,血管新生阻害薬のパゾパニブ塩酸塩である。軟部肉腫を対象とした第3相試験(PALETTE試験)において,無増悪生存期間(PFS)はパゾパニブ塩酸塩投与群で4.6カ月とプラセボ群1.6カ月に対して有意な延長を認めた。全生存期間(OS)に差はなかった(12.5カ月vs.10.7カ月)。主な有害事象は倦怠感,高血圧,下痢,食思不振であった1)。
アルカロイド化合物のトラベクテジンも,軟部肉腫を対象に,ベストサポーティブケアを対照とする国内第2相比較試験が行われた。主要評価項目のPFSはトラベクテジン群で有意に延長した(5.6カ月vs.0.9カ月)。主な有害事象は,骨髄抑制,肝機能異常,消化管毒性,倦怠感,横紋筋融解症などであった2)。
また,エリブリンメシル酸塩はアントラサイクリン系抗癌剤治療を含む少なくとも2レジメンの前治療後に増悪した進行再発悪性軟部腫瘍(脂肪肉腫または平滑筋肉腫)に対して,ダカルバジンを対照とした第3相試験(309試験)において,OSを有意に延長した(13.5カ月vs.11.5カ月)。PFSは有意差がなく(両群とも2.6カ月),また,奏効率も差がなかった(4%vs.5%)。主な有害事象は好中球減少,疲労,脱毛,悪心,末梢神経障害であった3)。
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