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乳腺線維腺腫[私の治療]

No.5001 (2020年02月29日発行) P.49

大住省三 (国立病院機構四国がんセンター乳腺外科がん診断・治療開発部部長)

登録日: 2020-02-26

最終更新日: 2020-02-25

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  • 乳腺線維腺腫は,良性乳腺腫瘍の中で最も頻度の高いものである。10歳代後半からみられるようになり,30歳代までの女性では非常に高頻度にみられる。線維腺腫は通常境界明瞭で,表面平滑な弾性のあるよく動く腫瘍として触れる。その経過は,通常2~3cmまでは大きくなることはあるが,それ以上大きくなることは少なく,生命の危険を及ぼすことはない。むしろ,乳癌を代表とする悪性腫瘍,あるいは葉状腫瘍との鑑別が問題となり,画像診断と臨床経過などから線維腺腫ではない可能性が高い場合は,積極的に生検を行って正しく診断を付けるべきである。

    ▶診断のポイント

    触診所見ならびに画像診断と生検結果が線維腺腫の診断の根拠となる。

    画像検査としては,マンモグラフィや超音波検査では,通常境界明瞭な円形ないし類円形を呈することが多く,粗大な石灰化(マンモグラフィではポップコーン様の形態が典型的である)を伴うこともある。生検では,摘出生検で診断は確定するが,実際には腫瘍が摘出されることは通常少なく,針生検されることが多い。針生検で診断はほぼ確定するが,針生検の所見のみでは葉状腫瘍との鑑別が十分にできないことがある。針生検で線維腺腫と診断されていても,臨床経過など(たとえば,腫瘍が3cmを超える場合や腫瘍が急速に増大する場合など)から葉状腫瘍が疑われる場合は,積極的に摘出生検を行って,診断を確定すべきである。

    ▶線維腺腫で知っておくべきこと

    臨床的に特殊なものとしては,巨大線維腺腫と若年性線維腺腫がある。巨大線維腺腫の特徴としては,その組織像は通常の線維腺腫の所見を示すが,その大きさが5cmを超え,良性ではあるが積極的な切除の対象となることが挙げられる。また,葉状腫瘍と臨床的に鑑別できないことが多く,鑑別には病理診断が必要である。若年性線維腺腫は,主に思春期に発生する線維腺腫で,急速に大きくなる場合もあり,巨大線維腺腫と一部概念が重なる。組織像としては間質成分の細胞密度が通常の線維腺腫より高いが,葉状腫瘍のような間質細胞の異型ならびにstromal overgrowthの像は示さず,間質細胞の分裂像もまずない。

    線維腺腫の病理診断としては,その患者のその後の乳癌発症リスクの点でcomplex fibroadenomaとnoncomplex fibroadenomaとにわけられる。腫瘍の組織像に,3mmを超えるcysts,sclerosing adenosis,epithelial calcificationあるいはpapillary apocrine changesなどの変化を認める場合はcomplex fibroadenomaと分類され,その後の乳癌発症リスクが少し高い(この腫瘍のがん化ではない)とされている。

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