【オラパリブとBRACAnalysis診断システムによるコンパニオン診断】
オラパリブは,BRCA1またはBRCA2遺伝子の生殖細胞変異陽性(遺伝性乳癌卵巣癌症候群:HBOC)かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌に対して,2018年7月にわが国で承認されたポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬である。わが国における遺伝性乳癌の頻度は全乳癌の5~10%と推定され,BRCA1/BRCA2遺伝子が遺伝性乳癌全体の約2/3を占める1)。
BRCA1/BRCA2遺伝子は二本鎖DNA損傷を修復する働きを持ち,PARPはDNAの一本鎖修復を担う。BRCA1/BRCA2遺伝子変異を持つ細胞にPARP阻害薬が作用すると,両方の修復機能が阻害されて合成致死をきたし細胞死が誘導される。オラパリブは国際共同第3相OlympiAD試験において,化学療法群との比較で無増悪生存期間を3カ月延長し,奏効率6割を示した2)。
オラパリブの適応は,コンパニオン診断プログラム「BRACAnalysis診断システム」によるBRCA1/BRCA2遺伝子の生殖細胞変異の判定結果に基づき決定される。本システムは,遺伝カウンセリング体制を持つ施設,あるいはそれらの施設との連携のもとでのみ実施される。
【文献】
1) Momozawa Y, et al:Nat Commun. 2018;9(1): 4083.
2) Robson M, et al:N Engl J Med. 2017;377(6): 523-33.
【解説】
山下啓子 北海道大学乳腺外科教授