【抗HER2薬の開発に伴い生存率が著しく改善】
human epidermal growth factor receptor 2(HER2)陽性乳癌の予後は,抗HER2薬の開発に伴い著しく改善した。現在,抗HER2抗体薬のトラスツズマブとペルツズマブ(早期および転移乳癌),抗体薬物複合体のトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1,転移乳癌のみ),低分子化合物のラパチニブ(転移乳癌のみ)がわが国で使用されている。
HER2陽性早期乳癌は抗HER2薬と化学療法を併用する術前療法により,高率に病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)をきたす。特にホルモン受容体陰性HER2陽性乳癌のpCR率は,抗HER2薬としてトラスツズマブのみ使用した場合は約4割,ペルツズマブ(2018年秋より早期乳癌でも使用可能)を併用した場合は約8割となる。さらにこのタイプは,術前薬物療法でpCRとなった場合は非常に予後良好で,再発することは稀である。
最近,KATHERINE試験(HER2陽性早期乳癌で術前薬物療法後,腫瘍が残存した症例における,術後療法としてのトラスツズマブとT-DM1の比較試験)の結果,T-DM1群で再発が5割低下することが報告された1)。HER2陽性早期乳癌は再発しない時代になったと言えるかもしれない。
【文献】
1) von Minckwitz G, et al:N Engl J Med. 2019;380 (7):617-28.
【解説】
山下啓子 北海道大学乳腺外科教授