全日本民主医療機関連合会(民医連)はこのほど、経済的事由による手遅れ死亡事例が2016年に58事例あったとの調査結果を発表した。
調査は昨年、全国の民医連加盟641事業所を対象に実施。「国民健康保険税(料)やその他保険料滞納などによる無保険もしくは資格証明書、短期保険証発行で病状が悪化し死亡に至ったと考えられる事例」「正規保険証を保持しながらも、経済的事由により受診が遅れ、死亡に至ったと考えられる事例」について回答を求めた。調査は民医連が05年から毎年実施しているもの。12年から60例前後で推移している。
調査結果によると、16年の58事例の内訳は、男性が78%、女性22%で、独居が55%を占めた。雇用形態については無職が45%で、収入が不安定な非正規雇用は21%、収入が不安定な自営業が8%。死亡原因の7割が悪性新生物(疑い含む)だった。受診前の保険情報は、無保険や国保資格証明書、国保短期証が合わせて約6割。未受診や中断で7割以上が治療につながっていなかったとしている。15%が自覚症状出現から半年以上未受診で、治療開始から1カ月以内の死亡は4割を占めた。
民医連理事で医師の田村昭彦氏(九州社会医学研究所)は会見で、手遅れ事例の要因について、①医療機関で窓口負担金が払えない、②医療費が払えない際の相談窓口がない─などを列挙。「相談窓口がないことで、国民健康保険法第44条の窓口負担金減免の制度もほとんど生かされていない。行政は手遅れになる前に相談できる窓口を構築する必要がある」と強調した。