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米国の終身介護退職者コミュニティ(CCRC)における終末期医療(7)[エッセイ]

No.4856 (2017年05月20日発行) P.70

宮本礼子 (江別すずらん病院 認知症疾患医療センター長)

森永知美 (MRG Associates, Inc. 代表)

宮本顕二 (北海道中央労災病院院長)

登録日: 2017-05-21

最終更新日: 2017-05-16

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  • 緩和医療を専門とする医師へのインタビュー─高齢者の終末期医療について

    今回は何人かの医師と話す機会がありました。今回と次回でその内容を報告します。

    Dr. Aaron Storm(南カリフォルニア大学医学部臨床医学助教、緩和医療チーム)
    「緩和医療は米国でもまだ歴史が浅いため、よく知らない医師が多いです。私は南カリフォルニア大学医学部で緩和医療を教えていますが、その講義時間は十分ではありません。認知症患者の家族には、食べられなくなるのは病気の自然経過であることを説明し、経管栄養を勧めません。多くの論文で、進行した認知症患者には経管栄養を勧めないとあります。米国でも高齢者の終末期を診る医師は、緩和医療の専門家ではなく、老年科医師や家庭医です」。

    Dr. Susan Enguidanos(南カリフォルニア大学老年学部准教授)とDr. Richard Brumley(ホスピスと緩和医療の専門医)
    「米国は他国と違い、緩和医療とホスピスサービスを区別しています。緩和医療は治癒と症状緩和を目的にし、ホスピスサービスは症状緩和だけを目的とします。ホスピスサービスでは延命治療を控えなければならないことや、患者の中には、ホスピスサービスに移ることで生きる希望をなくす人がいることから、医師はホスピスサービスへの移行を決定したがりません。その結果、ホスピスサービスへの移行が遅れます。移行後の平均生存日数が17日ときわめて短いのはそのためです。また、ホスピスの利用率も低いです。米国人の大多数が最期を自宅で迎えたいと希望しているにもかかわらず、まだ多くの人が病院で亡くなっています。

    我々は17年間緩和医療に取り組んできましたが、米国の症状緩和は十分でないと思います。そのため、根治医療を行いながらホスピスのような緩和医療をより早期に導入することで、患者の救急医療利用が減り、治療の満足度が向上するのではないかと考えました。そこで、カイザー・パーマネンテ保険(米国最大のマネージドケア組織)と契約している患者で、ホスピスサービスを受けておらず、およそ1年以内に亡くなりそうな終末期患者を対象に、標準治療に加え、積極的な症状緩和を在宅で行うという研究を行いました。その結果、救急受診が減って医療費は下がり、患者の満足度が高まり、自宅で亡くなる割合が増えました。慢性疾患において救急受診が減るということは、疾患管理が良いとされ、主治医にとっても保険会社への医療費請求の点で有利です。これらの患者は、緩和医療が終了すると75%がホスピスサービスに移行していました。

    この研究成果から、カイザー・パーマネンテは在宅緩和医療モデルを実用化しました。現在、我々はほかの保険会社とも組み、3つの州でプライマリケアに在宅緩和医療を組み込み、緩和医療を標準治療のひとつに位置づける取り組みを拡げています。プライマリケアを行う医師は、緩和医療についてもっと勉強して欲しいと思います。

    米国にも経管栄養の患者はいますが、減ってきています。経管栄養を行っても寿命は延びないことがこれまでの科学的エビデンスで明らかになっています。中心静脈栄養は特別な状況で期間限定でしか行いません。医師は終末期には栄養を必要としないこと、水分を増やせば痰が増え、吸引が必要になること、そのために経管栄養を行わずに自然に亡くなることがよいことを、患者と家族に教えなくてはなりません」。

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