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健保法改正研究会:指導・監査の改善を求めるシンポジウム開催─日弁連意見書に基づく制度改善を国会議員に要請

No.4770 (2015年09月26日発行) P.12

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-10

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第4回目となる健保法改正シンポが開催された。課題は山積しているものの、昨年8月に日弁連が指導・監査に関する意見書をまとめるなど、改善に向けた動きは徐々に広がっているようだ。

指導や監査、処分の改善を求める医師、弁護士らによる「健康保険法改正研究会」の第4回シンポジムが8月30日に開催された。シンポでは、昨年8月に日本弁護士連合会が厚生労働省に提出した指導・監査の改善に関する意見書の影響や、行政文書開示請求の現状について意見が交わされた。

「指導大綱・監査要綱改訂に現場の声を」

日弁連意見書は、同研究会会員で歯科医の成田博之氏(青森県弘前市)らが中心となり、日弁連の人権擁護委員会に対し、指導・監査が「保険医らの適正な手続的処遇を受ける権利」を侵害する恐れがあるとして、働きかけたことがきっかけとなりまとめられたもの。個別指導の選定理由の開示や指導対象とする診療録の対象となる事前指定、弁護士の指導への立会権など7項目を問題視し、その改善や検討を求めている。

成田氏は制度見直しに向け、複数の国会議員に対し意見書に基づく改善を要請したと報告。「指導大綱・監査要綱の改訂時期を迎え、厚労省で作業をしていると聞く。改訂に反映されるよう現場から意見を出していくべき」と訴えた。例えば、個別指導の選定理由については、今年4月21日の参議院厚生労働委員会で、塩崎恭久厚労相が「大事なことは、公平で客観的な基準でもって選ぶということ」と答弁するなど、議論を深める必要性に言及している。

成田氏はこのほか、青森県保険医協会が752機関に対し今年7月に実施した、「個別指導緊急アンケート」(回収率12.6%)の結果を紹介。選定理由の開示についての回答では、約9割が開示または一部開示を求める結果となったものの、実際には「不利益を受けないか心配」「目をつけられるから」などの理由から、現場で選定理由を確認できていない状況が浮き彫りとなった。

厚労省の「本音」と実態の乖離が明らかに

シンポではこのほか、岡山県保険医協会が指導・監査に関する行政文書開示請求の現状を紹介した。同協会の英哲郎氏は、開示請求訴訟を通じ、厚労省作成の「医療指導監査業務等実施要項」などから「厚労省の『建前』と『本音』が見えてきた」と指摘。指導に立ち会う学識経験者の役割は、「中立的な立場」から「指導を受けるものからの質問に答えるなどして援助を与える」ことを目的とするが、現実的には「行政側からの要請がない限り、発言することはできない」と述べ、「指導大綱などの建前と実態が大きくかけ離れている」と訴えた。

また弁護士の竹内俊一氏は、「密室性のある指導・監査は可視化することが必要。あくまで指導であり、行政と保険医は対等な立場であるはず」と強調。同じく弁護士の柿崎弘行氏は「監査と異なり、指導におけるカルテ閲覧権限は規定されていない。監査と同様にカルテを閲覧することが、行政の裁量権の範囲内なのか」と指導・監査のあり方を問題視した。


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