わが国のがん罹患患者のうち,20~69歳が46%を占める。特に乳癌の年齢階級別罹患率は30歳代から増加し,40~60歳代にピークを認める。この世代は家族でも社会でも中心になる世代であり,がん罹患は社会に大きな影響を及ぼしている。就労中に乳癌と診断された患者の多くが検査,治療のために休職,時には離職を余儀なくされ,さらにその後の復職にも影響を与え,「働きたくても働けない」状態となっている。
このように,がん罹患が患者の就労へ影響を及ぼすことや,社会的課題の解決や啓発に向けた対策として,2012年6月の厚生労働省「第2期がん対策推進基本計画」において,「働くことが可能かつ働く意欲のあるがん患者が働けるよう,医療従事者,産業医,事業主等との情報共有や連携のもと,プライバシー保護に配慮しつつ,治療と職業生活の両立を支援するための仕組みについて検討し,検討結果に基づき施行的取り組みを実施すること」が示され,医療機関と就労関連の専門職との協働が求められている。
近年,がん患者の支援に対する医療者側の関心が高まってきている傾向はあるが,患者の就労問題に対しての理解,具体的な方策などの知識は十分でない。また,実臨床の中では,治療に加え就労に関する的確なアドバイスを行うことが困難である。
がん患者への就労支援には,社会保険労務士やソーシャルワーカーなどの医療者以外の多職種による対応ができる体制の整備など,協働に向けた病院の支援体制の構築が必要である。
【解説】
中山可南子*1,山内英子*2 *1聖路加国際病院乳腺外科*2同部長・ブレストセンター長