注意障害,幻視や錯視,不安,興奮などが短期間に出現し,変動する場合は,せん妄を見逃さない
高齢者のせん妄は複合的な原因で起こり,薬剤によるせん妄は減量・中止で改善する
脳血管障害を伴う認知症患者はせん妄を併発しやすく,BPSDが重篤になりやすい
せん妄は,急性で一過性に経過し,軽度から中等度の意識レベルの低下を背景にして,様々な認知機能障害や精神症状を伴う症候群であり,迅速な診断と積極的な介入が必要である。せん妄の多くは可逆性であり,適切な対応により数日から数週間で改善するが1),治療介入をしなければ,永続的な脳障害や死亡の転帰が予測される。患者が死亡する場合は,せん妄の基礎疾患が原因になることもあれば,せん妄による衝動的行動が原因になることもある。
症候群であるせん妄の発症は,多要因性であり,背景因子,誘発因子,直接因子が関与している(図1)2)3)。つまり,ストレスだけではせん妄は発症せず,直接因子(単一でも意識障害をきたしうる要因)が存在し,背景因子(代表例は認知症),誘発因子(代表例は集中治療室などの環境要因)が著明なほど,せん妄は発症しやすくなる2)3)。表1に直接因子となる主な身体的疾患を挙げるが2),高齢者を対象とした実地臨床では,アルコール誘発性のみならず,“薬剤性”(特に抗コリン作用を持つ薬剤,ベンゾジアゼピン系薬剤)の評価が重要である2)。また,せん妄は高齢者に頻度が高く,認知症との鑑別が重要となるが,認知症に合併することも多いため注意を要する1)。
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