厚生労働省の「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」(座長=樋口範雄武蔵野大教授)が3日、初会合を開いた。主な検討課題には、患者と医療従事者が将来の意思決定能力の低下に備え、今後の療養を事前に話し合う「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)の普及が上がった。同省は10月以降、国民と医療・介護従事者を対象に、終末期の意思決定支援に関する意識調査を実施し、来年3月をメドに報告書を取りまとめる方針。
同日の会合では、緩和ケアを専門とする木澤義之構成員(神戸大病院)が文献や自身の見解に基づき、ACPの解説を行った。木澤氏は「ACPを行うことで、患者の自己コントロール感が高まり、患者の意向がより尊重されたケアが実践される」などのメリットを挙げた一方で、「時間と手間がかかり、健常人の約半数は1度表示した意思をその後に変えてしまう」などの問題点も提示した。
また、がんの転移が分かった直後など、ACPの時期が早すぎると、確認できる意思は不明確なものになり「利益より害が大きくなる」と指摘。「ACPは適切な時期に複数回に分けて実施し、患者が意思表示できる間は何度も確認する必要がある」と強調した。さらに「患者は自分を最もよく知る医師とのACPを望み、信頼する家族や医師ならば、最期の治療方針の決定を委任してもよいと考える。患者は自分の意向が尊重されることを必ずしも重要視しない」と述べた。