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虐待対応能力のボトムアップを[お茶の水だより]

No.4689 (2014年03月08日発行) P.12

登録日: 2014-03-08

最終更新日: 2017-08-09

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▶児童虐待に関する相談対応件数の増加が止まらない。全国の児童相談所と市町村の2012年度の対応件数はそれぞれ6万6701件(1999年度の5.7倍)、7万3200件に上った。地域全体における体制整備が求められる中、医療の現場では何ができるか。現状では、身体的虐待を疑わせる子どもの小児科受診が多い一方、虐待に関する知識や診療経験が不十分だったり、組織的対応の体制がない場合など、多くの虐待が見逃されている実態がある。
▶各都道府県、指定都市の中核的医療機関を中心に児童虐待対応のネットワークや医療者の教育を行うことを目的に、厚生労働省が2012年度に開始した「児童虐待防止医療ネットワーク事業」。先月には医療機関内に対応組織を立ち上げる場合の参考となる『手引き』をまとめ、先進事例を紹介している。
▶そのうち北九州市立八幡病院の取り組みのポイントは虐待対応能力のボトムアップ。受診した子どもは事故外傷例を含めすべて小児科医がまず診療するほか、診察室、看護師詰め所、レントゲン撮影室など各部署にチェックリストを配置し、虐待を疑ったら誰でもチェックを入れてカルテに挟み、反映される仕組みを作っている。疑い症例は看護師長から小児科医、院長に報告され、事後検証も行う。診療所の医師が最寄りの基幹病院に24時間相談できる体制も整備。市の小児科医会、医師会に委員会を設け、各診療科の医師や園医・校医が基幹病院に連絡可能となっている。
▶診断や加療を必要とするほどの重篤な事例に関わり、虐待を発見しやすい立場にあるにもかかわらず、現状では医療機関からの通告は児童相談所の対応件数全体のわずか4%。受診の機会に虐待を見逃すことなく、早期に対応するためには、職員の負担軽減が不可欠だ。前述の『手引き』を参考にして院内に対応組織を設置し、通告も組織が行うことで、主治医が個人ですべての責任を負い、虐待者(疑い)から不信感やクレームを向けられることを防げる。さらに、各医療機関と地域の中核医療機関との相談・連携体制、症例の集約と解析、対応へのフィードバックといった循環が、医療者の意識向上につながる。
▶子どもの安全・安心が疑われたら、すべての医療者が即時対応できる体制づくり、そうした虐待対応能力の“ボトムアップ”こそ、重篤例・死亡例を未然に防ぐカギとなる。

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