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300例の全ゲノム解読による肝臓癌ゲノム変異の全容解明【多数の既知・新規の関連遺伝子の同定など大きく前進。新薬開発への活用に期待】

No.4871 (2017年09月02日発行) P.50

小玉尚宏 (大阪大学消化器内科)

竹原徹郎 (大阪大学消化器内科教授)

登録日: 2017-08-29

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近年,次世代シーケンサーの飛躍的な進歩により,ヒトの全ゲノム解析が容易に行えるようになった。これに伴い,がんのゲノム変異の全容解明をめざして,国際がんゲノムコンソーシアム(IC GC)が発足し,そのプロジェクトのひとつとして日本人300例の肝臓癌の全ゲノムシーケンス解析結果が公表された1)。その結果,1つの腫瘍当たり約1万箇所にゲノム異常を認め,多数の既知(TP53,CTNNB1等)・新規(ASH1L,NCOR1等)がん関連遺伝子が同定された。中でも,6割以上の肝臓癌においてテロメア伸長酵素であるテロメラーゼをコードするTERT遺伝子の恒常的な活性化が認められ,テロメア長の維持による細胞の不死化が肝臓癌の重要なドライバーであると考えられた。

また新たに,B型肝炎ウイルスのみならずアデノ随伴ウイルスゲノムの肝臓癌ゲノムへの組み込みや,ゲノム上の非コード領域や非コードRNAへの変異も多数同定され,肝臓癌ゲノムの多様性が明らかになった。さらに,これら多数例のゲノム解析結果から,肝臓癌は6つに分類され,がん抑制遺伝子であるTP53の変異を有するタイプでは,予後が不良となることも明らかとなった。

今後,これらの大規模なゲノム解析結果をもとにして,肝臓癌の新規分子標的治療薬の開発が加速していくことが期待される。

【文献】

1) Fujimoto A, et al:Nat Genet. 2016;48(5):500-9.

【解説】

小玉尚宏*1,竹原徹郎*2 *1大阪大学消化器内科 *2同教授

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