▶医療機関のウェブサイトを広告規制の対象とする改正医療法が先の通常国会で成立した。施行日は、公布日(6月14日)から1年以内とされている。発端は、美容医療の消費者トラブルの増加だった。内閣府の消費者委員会が2011年にウェブサイトの不適切表示の取り締まりを厚労省に要請したが、その時は、一般医療機関の情報提供への影響を考慮し、「医療機関ホームページガイドライン」を策定して自主的な改善を促した。しかし、その後も不適切表示が存在することから、消費者委員会は15年に医療機関のウェブサイトを広告に含めて医療法の規制対象とするよう要請した。
▶改正法施行にあたっては、美容医療以外にも行政に監視の目を行き届けてもらいたい分野がある。がん患者を対象とする自由診療だ。現在、広告可能な自由診療は「保険診療または評価療養もしくは選定療養と同一の治療等」「薬事法の承認または認証を得た医薬品または医療機器を用いる治療等」などと限定的だ。さらに、虚偽・誇大広告のみならず、医療従事者の主観や科学的根拠に乏しい文献など、客観的事実を証明できない内容も広告として認められていない。こうした広告規制が医療機関のウェブサイトに適用された時、表現の再考を迫られる自由診療のサイトは少なくないだろう。
▶腫瘍内科医の勝俣範之氏は先週号(No.4871)のインタビューで、蔓延する“インチキがん医療”に警鐘を鳴らした。残念ながら、それらの実施を制限する規制は現状ではほぼない。しかしせめて、エビデンスのない治療法を推奨するウェブサイトの広告規制を早急に行うことで、がん患者が標準治療の受診機会を失うことができるだけないようにすべきだ。