株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

現場の声を反映した基金に[お茶の水だより]

No.4687 (2014年02月22日発行) P.90

登録日: 2014-02-22

最終更新日: 2017-09-14

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

▶厚労省が「2025年の超高齢社会に対応できる医療提供体制の再構築」と位置づける2014年度診療報酬改定が答申された。医療提供体制の再構築に向けて政府は、2014年度予算案で診療報酬以外の財政支援制度も用意した。消費税増税分904億円を財源として都道府県ごとに基金を創設する。これは、昨年8月、社会保障制度改革国民会議の報告書に盛り込まれた「診療報酬・介護報酬とは別の財政支援の手法(基金方式)と適切に組み合わせて改革を実現すべき」との提言を受けたものだ。厚労省は今の通常国会に提出する「地域医療・介護確保法案」に基金の法律上の根拠を設ける。
▶現時点で、基金の対象事業として検討されているのは①病床の機能分化・連携に必要な事業、②在宅医療・介護サービスの充実のために必要な事業、③医療従事者の確保・養成のための事業─の3分野に関わるものだ。厚労省は法案成立後に基金に関する基本方針を策定して対象事業を明確化するという。都道府県は基本方針を参考に整備計画を作成し、整備計画に基づき事業を実施する流れになる。
▶超高齢社会に対応する医療・介護提供体制とするためには、新しい基金をいかに有効活用するかが重要になる。その参考になるのが、地域の医療課題を解決する目的で厚労省が2009年度から13年度まで実施した地域医療再生基金ではないか。
▶この事業を評価する厚労省有識者会議のメンバーは昨年、その成果を認める一方で、課題として「公立病院への支出が多いが、民間病院を含めた使い方があっても良かった」「県で進捗管理を回す視点が弱い。地域の有識者会議を立ち上げ、日常的に活動してはどうか」「医師会や病院、コメディカル等からの行政への働きかけが弱い。現場からの提言が必要」などと指摘している。
▶こうした反省を踏まえれば、新たな基金については、現場の声がより反映される仕組みが必要だ。事業の実施主体である都道府県と、医師会をはじめとする各医療関係団体が地域の将来像をともに探り、整備計画を作成する。そして実現に向けて、医療機関の自主的な病床転換・医療機能の充実を基金が支援する。そうした取り組みによって、混乱なく2025年に向けた医療提供体制の再構築が実現することを期待したい。

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top