私は10年ほど心療内科医として大学病院で勤務した後、診療所で家庭医療の研修を受けました。現在は家庭医(総合診療医)として診療しつつ、週1回心療内科の診療を行っています。今回は、心療内科医の立場から、一般内科でもよく遭遇するパニック障害について、心療内科の診療の特徴もふまえてお伝えいたします。
たとえば、満員電車の中で急に不安感や動悸が強くなり電車の中で倒れて救急搬送された30代女性のAさん。採血や心電図検査では、特に異常は認めず心配ないと言われましたが、その後も電車に乗ると不安感が強くて、会社に行けなくて困っているため来院されました。心療内科では、以下の3点を大切にして治療を進めます。
1.患者の物語を大切にします
Disease(疾患)の医学的診断を行うと同時に、Illness(病い)の物語を明らかにしていきます。DSM-5の診断基準に当てはめるだけではなく、たとえば、Aさんは父親が急性心筋梗塞で急逝しており、自分もそうなるのではないか、という不安が背景にあるなど、患者自身の解釈モデルを伺うことで、より相手の立場が理解でき、共通の理解基盤も形成されていきます。
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