インフォームド・コンセントの流れの中でカルテを含めた医療情報開示の動きが進んできている。おおかた賛成ではあるが、慎重にすべき点もあると思われる。1つは悪性腫瘍を伴う、予後に必ず死を迎える特定の病気の場合であり、もう1つは妄想や幻想を伴う精神障害の場合である。
今、患者がカルテを欲しいと思う根底には、絶対的情報不足と思っている現実がある。カルテの現実を知らしめ、そこに何が書かれていようとも引き受ける覚悟を持つ患者教育、そうした双方の状況整備が必要であると思われる。そこで提案だが、カルテやレセプトを含め、その解説のための第三者機関をつくりシステム化したらどうか。医学知識のない患者でも気軽にコンサルトできる環境づくりが急務と思われる。
医師も患者もより良い医療を求めていることは、自分自身の体の状態への「正しい診断」と「十分な説明」につきるのではないか。今日まで医療が科学テクノロジーに偏重したため、患者と医師のギャップを広げる方向にしか働かなかったともいえる。だからこそ、情報公開と情報開示、その溝を埋めていくための共有情報としてカルテを考える時期にきていると思う。いわば「情報を分かち合うことにより信頼関係はつくられる」のである。今は患者と医師が互いに協力していく時代である。あるいは一歩進んで、医療の主役は患者であり、医師はその手助けをする、という考えを常に持つのなら、このような問題は起きないのかもしれない。
残り543文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する