わが国で1960年代に,世界に先駆けて甲状腺結節の診断に応用された超音波(US)は,諸外国においてもしだいに普及し,現在では検診におけるUSの利用増加に伴って,甲状腺癌の過剰診断・過剰治療が問題化している。
米国甲状腺学会(ATA)ガイドラインは2009年版において,1cm以下の結節に対しては疑わしいUS所見,リンパ節腫大,頭頸部の被ばく歴や甲状腺癌の家族歴などを有する場合を除いては精査の対象としないことを明記した1)。今回の改訂版2)では,US所見を5段階に分類し,それぞれの悪性確率を示すとともに,穿刺吸引細胞診(FNA)の適応となる腫瘍径を定めた。
乳頭癌に特徴的なUS所見を呈するhigh suspicion(悪性リスク:70~90%)と濾胞性腫瘍が疑われるintermediate suspicion(10~20%)では,1cm以上でFNAが推奨された。low suspicion(5~10%)では1.5cm以上,腺腫様甲状腺腫が想定されるvery low suspicion(<3%)では2cm以上でFNAを勧め,完全な囊胞であるbenign(<1%)はFNA不要とした。
わが国から発信されたT1aN0M0乳頭癌に対する非手術経過観察の臨床試験結果もふまえ,1cm以下の超低リスクがんを精査から除外することが強調されている。
【文献】
1) Cooper DS, et al:Thyroid. 2009;19(11):1167-214.
2) Haugen BR, et al:Thyroid. 2016;26(1):1-133.
【解説】
岡村律子 日本医科大学内分泌外科病院講師