現在私のいる獨協医科大学病院総合診療科では外来、救急、病棟での診療とともに、幅広い学年の医師(学生~後期研修医)を様々なセッティングで指導している。そんな中、病歴を再現する力に加え、鍛えるべき重要な臨床力が洞察力だと感じる一例があった。
生来健康な17歳の男子高校生が3日間の胸痛を訴えて親御さんに連れられ受診した。少しつらそうに学生服姿でうつむいていたが、話を聞ける状態だった。
3日前までは特に何事もなく過ごしていたものの、その日夕食中に突然の右側の胸の前の痛みと咳を自覚し、息苦しさを感じた。その日はそのまま就寝したが翌朝も症状は変わらず、その後の2日で左の前胸部にも別の痛みが生じ、以降、両側の胸の痛みは徐々に移動するように中央に局在してきた。
来院当日には持続的な息苦しさと痛みが強くなってきたため、両親と一緒に病院を訪れた。痛みは鋭く持続的で、他に痛みがある場所はなく、吸気で悪化した。呼吸数は27回/分で、酸素飽和度は室内気で92%、他のバイタルは正常。フィジカルでは肺の音は、両側「なし」。胸部X線写真で両側気胸が確認された。
残り587文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する