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風船文化から帰国して[プラタナス]

No.4886 (2017年12月16日発行) P.3

土居 浩 (牧田総合病院脳神経外科)

登録日: 2017-12-18

最終更新日: 2017-12-13

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  • 私は1990年頃、豪州のRoyal Adelaide Hospitalで臨床研修に没頭し、毎日ひたすら脳外科の病棟と手術室の往復の日々を送っていた。毎日、緊張でかなりのストレスを感じていたが、英語を覚え始めた子どものつながりでパーティーにいくようになった際、風船が庭で迎えてくれ、ほっとした覚えがある。さらに余裕が出てくると、病室には必ず見舞いのバルーンがあり、売店にも色鮮やかなバルーンや風船があるのに気づいた。風船には必ずヘリウムガスを使うことを覚えて、我が家にも風船が少しずつ浸透していった。

    あるとき、病棟にライフル自殺の患者さんが運ばれてきて、手術で回復させた際、一緒に働いていたレジデントが「ヘリウムガスを用いた自殺もある」と説明していた。そのときは「ふ~ん」と聞き流して、通常業務をこなした。

    研修が終了し、帰国数年後から高気圧酸素治療に関与するようになって、一酸化炭素中毒の患者さんや減圧症などの治療に携わるようになった。

    その中で、変声用のヘリウムガス缶(ヘリウム80%、酸素20%)を吸引後、昏睡で運ばれた患者が転院搬送されてきた。当初は痙攣重積もあり、脳動脈空気塞栓症を疑い、再圧治療(減圧症などで施行される高気圧酸素治療)を何回も施行することにより、なんとか回復することができた。原因は酸素混合のへリウムガスを吸って圧外傷を来たし、肺静脈から脳内にかなりの気泡が入り起こったものとして、学会に症例報告した。

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