株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

地道に診療を重ねる医師こそが国の宝[お茶の水だより]

No.4887 (2017年12月23日発行) P.16

登録日: 2017-12-20

最終更新日: 2017-12-20

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

▶「一隅を照らす これすなわち国宝なり」─。天台宗開祖・伝教大師最澄が比叡山で修行する僧侶のため著し、嵯峨天皇に上奏した『山家学生式』の冒頭にみえる高名な一節である。時代の流れを通じて様々な解釈はあるものの、天台宗は、「自身が置かれた場所で、精一杯努力し、明るく光り輝くことのできる人こそ、何物にも代えがたい貴い国の宝」との意味としている。
▶本誌4月15日号の読者サロンで、「テレビでよく“スーパードクター”を喧伝しているが、地道に目立つことなく働く医師もいる。(皮肉をこめて)スーパーの反意語を探している」との声を掲載した。冒頭の一節は「スーパー」の反意語として、別の読者から本誌に寄せられたものだ。
▶テレビ画面の向こうでは、「スーパードクター」「神の手」と謳われる一握りの医師にスポットライトが当たりがちだ。また別の読者からは、「一部の患者は目の前の医師より友人やメディア、どこか遠くの医師の言葉を信じる傾向にある。これも不安や不満の表れであり、こちらの対応で受け入れてもらえればと思う」との声もいただいた。
▶『山家学生式』は、「国宝」の意を「道心有る人」、すなわち正しい道を実践しつづける人であると説く。医師にとっての道心とは何か。日本医師会の『医の倫理綱領』では、医学および医療は、人類愛を基にすべての人に奉仕するものとした上で、医業への尊厳と責任を持つことや患者との信頼関係を築くこと、営利を目的としないことなど、6項目を掲げている。
▶自身が置かれた環境で、患者との信頼関係を地道に結びながら診療を重ねる医師こそ「国の宝」といえるのではないだろうか。

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top