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まったく根拠のない話[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.115

大井一弥 (鈴鹿医療科学大学病態・治療学分野臨床薬理学研究室教授)

登録日: 2018-01-07

最終更新日: 2017-12-21

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薬学教育・研究を施行していく中で、ある傾向が出て結論を導くと必ず、その根拠が求められます。たとえば学会発表においても、その考察に至った根拠は何か、と常に聞かれます。

そのような経験から論文投稿時には、既報を徹底的に調べて新規性を強調し、新たな科学的根拠の確立につながったと結びます。医療現場では、マニュアルやガイドラインが夥しい数、生み出されていますが、それらも根拠が基で成り立っています。

では、医療現場における薬物治療のすべてが根拠に基づいたものか、というと、それは実践不可能なことから経験則が台頭します。

根拠と根拠の間に存在する根拠になりえていないものも実践してみると、奏功することもあり、それがやがて根拠となるものも多い。

根拠には、その確固たる理由が存在する、根拠に導くための意思統一が根拠という支柱を形成し、根拠の確立に至ります。根拠が確立されるまでのプロセスは、ヒトが携わるため、根拠のない理由により根拠の礎が崩され、根拠となるべき多くのものが埋没してしまうことも結構あります。根拠として世に認められるためには、途中で根拠のない因子の矢を受けないように防御することも重要です。

今日、情報を得ることはきわめて容易にできるため、そこには必ず根拠のない話が混在しており、それに惑わされ、時には宝を見失い、根拠のないことを根拠があるようにとらえてしまうこともよくあることです。

新年を迎えて、根拠や情報というものから少し離れた自由な発想により、将来の夢を語ってみませんか。根拠に振り回されない議論こそ、今後、生み出される根拠の種が詰まっているかもしれません。

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