昨年10月、世界医師会シカゴ総会において、第68代世界医師会会長に就任することが決まりました。日本人では、日本医師会元会長の武見太郎先生(1975年)、坪井栄孝先生(2000年)に続く3人目の就任となりますが大変名誉なことであり、身の引き締まる思いをしています。ご支援頂きました多くの皆様には、本誌面をお借りして改めて深く感謝申し上げたいと思います。
世界医師会は1947年9月17日、パリにおいて27カ国の医師が一堂に会し、第1回総会を開催したことを契機として設立されました。その目的は、医学教育・医学・医術および医の倫理における国際的な水準をできるだけ高め、また世界のすべての人々を対象にしたヘルスケアの実現に努めながら人類に奉仕することにあり、現在では、世界各国の112の医師会が加盟しています。
混沌とする世界情勢の中にあって、「危機にさらされる医療」「気候変動」「健康の社会的決定要因の問題」等、世界医師会として取り組むべき課題は山積しています。
そのような状況の中で、日本の国民の健康寿命を世界トップレベルにまで押し上げてきたわが国の医療システムを、世界の人々を安心へと導く世界モデルとして世界に発信していくことは、特に取り組みたいことのひとつとして挙げられます。
また、次期会長に選出頂いた後、アフリカ諸国の医師会からは、アフリカにおける公衆衛生の確立、安定した医療の確保と維持、そしてUniversal Health Coverageに向けた取り組みへの支援を要請されました。日本の医療の国際貢献、日本医師会としての医療の国際貢献の一環として、協力していきたいと思っています。
その他、医療危機という意味では、現在、紛争国において、反体制派と見なされた医療施設や医療従事者が迫害を受けるといったことが起きていますが、大変危惧しており、ぜひ、各国の協力の下に対応していきたいと考えています。
会長としての任期は1年と短いものですが、皆様方のご期待にそえるよう、精いっぱい取り組んで参る所存でおりますので、引き続きのご支援・ご協力をお願い申し上げます。