アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の重要性が高まっている。在宅医療などでACPを実践するオレンジホームケアクリニックの紅谷浩之氏に話を聞いた。
人生の最終段階と言われるような時期にどういうケアを受けたいか、本人の希望を共有しておくものです。胃瘻や延命措置の選択など具体的な処置を決める事前指示書の形ではなく、私は、共有する時間や雰囲気を含め、話し合いを継続する過程全体をACPと解釈しています。考えが変わっても構いませんし、「迷っている」というのもACPだと思います。ケアを行う上で、病気だけに振り回されずに、その人が人生で大事にしていることを尊重するための取り組みだと言えるでしょう。
個人的には、早く始めるに越したことはないと考えています。早すぎることのデメリットは、現実味がなく、夢や希望ばかりになってしまうことだと言われています。しかし、具体性はなくても、どんなことを言ったり思ったりする人なのかという人生観や死生観に関する集約は、常に行っておいてもよいのではないでしょうか。
私が実践していることとしては、外来で月に1回降圧薬をもらいにくる以外は元気な方に対しても、もしがんになったらどう過ごしたいかなどを常日頃から聞き、カルテに残すなどしてスタッフで共有しています。人となりを知りたいというスタンスから生まれるやり取りですが、それが後にACPとなる訳です。
早くからACPを考えている人は、いざ病気になった時にも葛藤が少ないように見えますし、家族がケアを選ぶときの心理的負担も軽減されます。医療者だけでなく、本人や家族にとっても有意義だと感じています。