熱性けいれんとは,主に生後6〜60カ月までの乳幼児期に起こる,通常は38℃以上の発熱に伴う発作性疾患(けいれん性,非けいれん性を含む)である。発作症状の多くは強直や間代けいれんであるが,けいれん性のものに限らないこと,すなわち,脱力や一点凝視のみなどの発作もありうることに注意が必要である
熱性けいれんの診断は除外診断によってなされる。髄膜炎などの中枢神経感染症,代謝異常,その他の明らかな発作の原因がみられないものを指し,てんかんの既往がある場合も除外される
年長児の有熱性けいれんについても,年齢以外の定義を満たす場合には熱性けいれんと同様に対応してよい。ただし,5歳以後に何度も発作を反復した場合や無熱時発作を発症した場合には,てんかんの可能性を念頭に専門医への紹介を考慮する
熱性けいれんの定義において日常診療で大切なことは,「熱性けいれん」という用語はfebrile convulsionsではなくfebrile seizuresの訳語として用いられていることである。従来「熱性けいれん」と呼ばれているため,けいれん性の発作に限られるような誤解をまねきかねないが,非けいれん性の発作も含まれること,すなわち,脱力や一点凝視のみなどの発作も含まれることに注意が必要である。
febrile seizuresは,1980年の米国国立衛生研究所のconsensus conferenceにおいて,「通常3カ月から(満)5歳までの乳幼児期に起こる発熱に伴う発作で,頭蓋内感染症や明らかな発作の原因がみられず,無熱性の発作の既往がないもの」1)と定義された。1993年には,国際抗てんかん連盟が「生後1カ月以後の小児に起こる中枢神経感染によらない発熱性疾患に伴う発作で,新生児発作やてんかん発作の既往のないもので,急性症候性発作をきたす他の疾患・状態の定義を満たさないもの」2)と定めた。米国小児科学会においては,1996年に「生後6カ月から満5歳までの小児に起こる中枢神経感染によらない発熱に伴う発作」3)と定義された。一方日本では,1996年の『熱性けいれんの指導ガイドライン』で,熱性けいれんは「通常38℃以上の発熱に伴って乳幼児に生ずる発作性疾患(けいれん性,非けいれん性発作を含む)で,中枢神経感染症,代謝異常,その他の明らかな発作の原因疾患(異常)のないもの」4)と定義されていた。
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