坂本竜馬の劇的な生涯を中心に、同じ時代をひたむきに生きた若者たちを描いた司馬遼太郎のベストセラー。文春文庫などに収録
私は元々本を読むのが好きでもなく、手塚治虫さん・水木しげるさんなどの漫画を好んでいました。38歳から2年間ボストンの病院に留学し、自宅にいる時以外は周りに日本人がいない状況で仕事をしました。当時はネットも発達しておらず質素な暮らしのために日本のテレビも新聞も見ることはできませんでした。時折、日本の新聞などを手に入れるとむさぼるように隅から隅まで読んでいました。
その時に今では亡くなった父親から「竜馬がゆく」文庫本8巻を送ってもらいました。初めて読む歴史小説です。読み始めるととても面白く、痛快です。「坂本竜馬という人はすごい!こんな人が歴史を作ったんだ!」と感激しながら読んでいきました。4巻ぐらいまで読んだ頃に「この人の人生はすごい。とても面白い。でも最後まで読んだら大好きな竜馬が死んでしまう。どうしよう。読みたくない、でも…!」と悩みました。そして結局、最後まで読みました。悲しみ、尊敬、いろいろな気持ちの混ざった大きな感銘を受けました。「とても面白いけれども読み続けたくない」という気持ちになったのは初めてでした。
これがきっかけとなり、歴史物がとても好きになりました。最近ではジャレド・ダイアモンド氏の壮大な歴史物(と言って良いか?)に感銘を受けました。今でも本屋で「竜馬がゆく」を見ると、元気だった父親やボストンで夢中になって研究した頃を思い出します。今の人間も数百年前あるいはもっと前の人間も遺伝子的には殆ど変わりません。先人達がどのような状況で、どう考え、どう行動し、結果がどうなったのか(=歴史)を学ぶことは、現代を生きる我々にとっても大事だと思います。「竜馬がゆく」は普段本を読んでない人や歴史物に興味がない人にもお勧めの一冊です。