□心膜の肥厚や癒着により,心臓の拡張障害をきたす疾患である。その原因は,ウイルス性・結核性心膜炎からの移行,心臓手術後,放射線治療後などが挙げられるが,明らかな原因を指摘できない特発性が多く存在する1)。心臓全体の拡張障害が主な病態であり,心腔内の容量制限から,全身のうっ血,心拍出量の低下がみられる。
□心臓全体の拡張障害から,右心不全・左心不全による症状が出現する。
□右心不全により下肢の浮腫を認め,胸水の貯留が高度になると呼吸困難をきたし,腹水の貯留により腹部膨満感を認める。拡張障害により右心系への血液流入が制限されるため,吸気時に右室充満の増加が起こらず静脈系に血液が集まる。このため,吸気時に頸静脈怒張が増強する,正常とは逆の反応であるクスマウル徴候が認められる。
□左心不全により肺うっ血をきたし,労作時息切れを認め,進行例では心拍出量の低下から低拍出量症候群となる。
□特異的な心電図変化は認めないが,心拍出量低下に対する応答である洞性頻脈を認めることがあり,また心嚢水貯留例では低電位を示すことがある。
□胸部X線では心膜石灰化をきたした例で心陰影に沿った石灰化所見を示す例があるが,感度は低い。心エコーでの評価では,心膜の肥厚や石灰化によるエコー輝度上昇が認められることがある。しかし,器質的異常がなく,左室収縮能も保たれている例が多い。
□パルスドプラ法では,僧帽弁口血流速波形で拡張早期(E)波の増高,心房収縮期波(A)波の減高,呼気時のE波増高(25%以上)を認めることが特徴である。
□心膜の肥厚を評価するにはCTやMRIのほうが優れている。収縮性心膜炎に特徴的な検査所見は,カテーテル検査での圧波形測定で得られる。
□心臓全体の拡張障害により,右房・肺動脈楔入圧・右室・左室の拡張末期圧の上昇と均一化が認められる。また,右室と左室の同時圧波形測定により,拡張早期の急速な圧低下と,それに続く急速な圧上昇(dip),拡張末期にかけての圧平坦化(plateau)による,dip and plateau型の特徴的な圧波形をとる。
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