2017年にCANTOS試験が報告されて以来、「抗炎症」療法はアテローム動脈硬化性疾患に対する現実的な選択肢となった。臨床試験では、コルヒチンが頻用されている。同剤はすでに安定冠動脈疾患例の虚血性心血管系(CV)イベント抑制作用が、ランダム化比較試験(RCT)"LoDoCo"と"LoDoCo2"で確認されている。しかしその機序は必ずしも明らかでない。
3月29日から米国シカゴで開催された米国心臓病学会(ACC)では、コルヒチンが冠動脈プラークに与える影響を、冠動脈CT血管造影(CCTA)を用いて評価したRCT"EKSTROM"が報告された。少数例のパイロット研究という限界はあるが、コルヒチンは不安定プラークに作用しているわけではなさそうだ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(米国)のMatthew J. Budoff氏が報告した。
EKSTROM試験の対象は、コルヒチン適応のない、安定冠動脈疾患である。すでに虚血性心イベントに対する低用量コルヒチンの抑制作用が証明されている上述LoDoCo2試験と同様の患者が組み込まれた。84例がランダム化され、1年後に再評価できた72例(両群36例ずつ)が解析対象となった。
平均年齢は約65歳、94%が男性だった。血管保護薬の使用状況は、72%がストロングスタチンを服用、レニン・アンジオテンシン系阻害薬は42%、β遮断薬は47%が服用していた。
これらの安定冠動脈疾患例は、コルヒチン0.5mg/日群とプラセボ群にランダム化され、52週間観察した。評価項目は冠動脈プラークの試験開始前後における変化である。CCTAを用いて評価した(そのため腎機能低下例は除外されている)。
1次評価項目は、CCTA上「低輝度プラーク」(不安定プラーク)の体積である。LoDoCo、LoDoCo2試験で観察された虚血性CVイベント抑制の主な機序は、これら低輝度プラークの退縮だと想定していたようだ。しかし1年後、仮説に反し、低輝度プラーク体積は、コルヒチン群とプラセボ群間にまったく差を認めなかった(両群とも変化はほぼ皆無)。
一方、全プラーク体積で比較すると、コルヒチン群で著明な進展抑制を認めた。すなわち、血管内腔に占めるプラーク容積の割合(PAV)は、プラセボ群では1.40%増加していたのに対し、コルヒチン群では0.30%のみだった(P=0.015)。
Budoff氏は「PAVがコルヒチン群で1.1%低値になっていたのは、(対象が同様だった)LoDoCo2試験の結果と一致する」と考察した。というのも、同試験で観察されたコルヒチン群における31%というMACE相対リスク減少率は、IVUS臨床試験メタ解析で示された「PAVが1%減少に伴いMACEリスクは相対的に25%減少する」という数字と類似するからだという(なお後者の数字は論文では19%)。
なお同メタ解析では、PAV減少に伴うMACE抑制の機序として、血管床全体における「プラーク安定化」を挙げている。
本試験はStanley W. Ekstrom Foundationから資金提供を受けて実施された。