□肝膿瘍〔liver(hepatic) abscess〕とは,病原体が経胆管的,経門脈的,経動脈的または直接的に肝臓に感染し,肝組織の融解壊死によって膿瘍が形成される病態である1)~7)。
□原因別としては,クレブシエラ属,エンテロバクター属,緑膿菌,大腸菌,嫌気性のバクテロイデス属などのグラム陰性桿菌や,ブドウ球菌,腸球菌属,レンサ球菌属などのグラム陽性球菌の感染による化膿性肝膿瘍と,原虫である赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)によるアメーバ性肝膿瘍がある1)2)4)5)。
□発熱,腹痛,肝腫大の3主徴や,悪寒・戦慄,全身倦怠感,食欲不振,悪心・嘔吐,体重減少,重症例での黄疸,腹水,敗血症性ショック等がみられる。
□アメーバ性肝膿瘍では約半数に下痢,時に下血を認める5)。
□血液検査:白血球増加,血沈の亢進,CRPの上昇,肝機能障害を認める5)6)。アメーバ性肝膿瘍では,赤痢アメーバ抗体が高率に検出される5)。
□腹部超音波:膿汁や壊死物質による不均一な低エコー域を認める。また内部に不規則な隔壁を伴うことがある5)~7)。
□腹部単純CT:境界不明瞭な低吸収域を呈する。造影CTでも膿瘍内部は低吸収域であるが,膿瘍によって周囲の肝実質が挫滅して形成された皮膜がリング状濃染を呈する。膿瘍周囲の肝実質は,炎症のため血流が増加し帯状,楔状,区域性に濃染される1)5)~7)。
□単純MRI:膿瘍内部はT1強調像で低信号,T2強調像で高信号,拡散強調像で高信号を呈する。膿瘍周囲も浮腫によりT1強調像で低信号,T2強調像で高信号を呈する。造影MRIでは造影CTと同様の所見を呈する5)。
□便検査:アメーバ性肝膿瘍では糞便への虫体の排泄は間歇的であるため,頻回の提出を要する5)~7)。
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