□Q熱の語源は"query fever"にあり,病原体が未解明の時代に原因不明の熱性疾患として命名された。後に,病原体は広義のリケッチアに含まれるCoxiella burnetiiであることが明らかとなった。
□家畜(ウシ,ヒツジなど)や愛玩動物(イヌ,ネコなど)の糞尿が乾燥した後,粉塵として吸引することにより気道感染する人獣共通感染症である。感染動物が妊娠していた場合,流産や死産を起こすことがあることも知られる。これは,本病原体が胎盤で爆発的に増殖するためである。ネコなどの流産時のヒトへの感染には注意を要する。
□本病原体は,熱や乾燥のほか消毒剤,紫外線などに抵抗性を示すため,ヒトへの感染力はきわめて強い。半数程度は不顕性感染で終わるとも言われ,ヒトからヒトへの感染はほとんど起こらない。
□本症は感染症法の4類感染症に分類され,診断した医師は直ちに保健所に届け出なければならない。
□急性Q熱は2~3週の潜伏期の後,急激な発熱,倦怠感などインフルエンザ様の全身症状から始まり,ついで乾性咳嗽や胸痛,時に息切れなどの呼吸器症状を伴う非定型肺炎を呈する。潜伏期の後期には一過性の菌血症を呈しやすく,引き続いて全身の各臓器に多彩な症状を呈する例もある1)。
□他方,慢性Q熱は,心内膜炎のほか慢性肝炎,骨髄炎を生ずるが,きわめて稀な病態である。慢性Q熱は急性Q熱から移行する頻度が5%とされ,急性Q熱とは異なり発症すると治療抵抗性で予後不良である2)。
□急性Q熱の標準的診断法は間接蛍光抗体法による血清抗体価の測定である。ペア血清でIgG抗体価の有意上昇を確認できれば確定診断となるが,抗体価上昇に数カ月を要する例も少なくない。PCR法も有用であり,血液のほか咽頭粘液,喀痰,気管支洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid:BALF)などを検体とした検索が施行される。
□Q熱において鑑別すべき疾患は,インフルエンザや他の病原体(マイコプラズマ,クラミジア,レジオネラなど)による非定型肺炎である。
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