□皮膚結核(cutaneous tuberculosis)は肺外結核の1つとして,毎年100人程度報告されている1)。
□HIV感染者の増加による皮膚結核患者の増加は報告されていない。
□皮膚結核の病型としては皮膚腺病が多い。
□皮膚結核は感染様式によって分類するが(表)2),臨床症状は多彩である。
□皮膚疣(いぼ)状結核(warty tuberculosis)は,皮膚が過角化状態になりやすい膝・肘や臀部などにみられる。
□皮膚腺病(scrofuloderma)はリンパ節,骨,関節,筋肉,腱などの結核病巣から直接連続性に皮膚に波及して病変を形成するか,冷膿瘍(cold abscess)を介して皮膚に病巣をつくる。頸部リンパ節結核から波及する症例が多い。
□尋常性狼瘡(lupus vulgaris)の好発部位は顔面で,本症は自覚症がなく,病変がきわめて緩やかに進行するため,発症してから初診までの期間が長い。
□metastatic tuberculous abscess(MTA)はTNF-α阻害薬投与や,免疫低下状態,免疫抑制薬の投与などのときに発症する皮下の結核である。
□結核疹は結核に免疫のある人が結核菌またはその代謝物を抗原とするアレルギー性反応として皮膚に病変を起こした状態。抗原は血行性に移行し,左右対称性皮疹のことが多い。(バザン)硬結性紅斑(erythema induratum)は循環障害を起こしやすい下腿に多い。
□一般検査,CRP,赤沈など。
□ツベルクリン反応,クォンティフェロン®(QFT-3G,QFT-ゴールド)またはELISPOT。塗抹抗酸菌染色法,分離培養法(小川培地や液体培地),遺伝子検査(PCR法やDNA-DNAハイブリダイゼーション法など)。
□薬剤感受性試験(必ず実施する。遺伝子変異検査で耐性の判定可能)。
□病理組織検査(結核結節などを伴う肉芽腫性炎症,乾酪壊死,類上皮細胞肉芽腫,ラングハンス巨細胞など)。
□結核菌を証明できない場合は,臨床症状,検査,病理組織所見などを総合的に勘案して診断する。
□耐性菌を出現させないため,短期に多剤抗結核薬を使用する。
□感受性試験の結果に従って抗結核薬を複数選択する。
□皮膚結核の治療は肺結核と同じ治療を行う(「§3-10 肺結核」参照)。
□結核の標準的な短期化学療法を行う。リファンピシン(RFP),イソニアジド(INH),エタンブトール(EB),ピラジナミド(PZA),ストレプトマイシン(SM)などを使用し,6カ月間の治療を行う。
□呼吸器内科医と連携して患者を診察する。特に薬の副作用,全身性の結核の検索,院内感染防止や,医療従事者の感染予防。
□皮膚結核患者を診断した場合には直ちに保健所に「結核発生届」を提出しなければならない(感染症法第12条)。結核疹についても提出する。
1) 森 亨,他:結核. 2009;84(3):109-15.
2) 石井則久:皮膚抗酸菌症テキスト. 金原出版, 2008, p24.
▶ 結核予防会結核研究所
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