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褥瘡ケアとしてのポジショニング[私の治療]

No.5265 (2025年03月22日発行) P.44

田中マキ子 (山口県立大学学長)

登録日: 2025-03-19

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  • 褥瘡は,身体に加わった外力が,骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下あるいは停止させることで起こる,組織が不可逆的な阻血性障害に陥った状態とされる。こうした血流低下に加え,全身的な要因も介在するため,褥瘡発生機序は複雑になってくる。健常人では,圧迫等を受け血流の低下が生じると「痛み」「しびれ」などを自覚し,寝返りや坐り直しなど体位を変えるため褥瘡発生を予防できる。しかし,褥瘡等を発生しやすい状況では,知覚神経障害をはじめ自発的な動きが何らかの理由により障害されるため,褥瘡の治療・予防のために人為的な介入が必要となり,様々な道具を用いたポジショニングが行われている。
    これまで褥瘡発生には体圧・ずれ・摩擦の3要因が影響すると言われていたが,Wounds Internationalのworking groupが2010年に,褥瘡予防はpressure,shear,friction,microclimateから検討することが重要と指摘した。それを受けて米国褥瘡諮問委員会(NPUAP)/欧州褥瘡諮問委員会(EPUAP)/環太平洋褥瘡対策連合(PPPIA)による2014年版「褥瘡の予防・治療の国際ガイドライン」では,新たな褥瘡予防として「マイクロクライメットの管理」が追加された。マイクロクライメットは「微気候」とも言われ,「皮膚局所の温度・湿度」のことを指す。ポジショニングを行うことは,外力を受ける部位を変え,体圧分散を良好にする。つまり体位を変えることで寝床内の換気が図られて,体温上昇の予防や湿度を透過させて下げるなど褥瘡の治癒・予防に効果がある。

    ▶アセスメントのポイント

    同一体位が続くことで生じる部分圧迫の部位や状況を観察することや,体軸のねじれを評価することが重要である。ヒトの身体は左右対称であるため,体軸のねじれ具合を評価しやすい。ねじれが生じると,その影響は他の部位へ不具合を及ぼし,1つのねじれが別のねじれを発生・増強させるなど負の連鎖に陥る。脳梗塞等では片麻痺を生じやすく,体軸がねじれ,沈み込んだ身体部位には部分圧迫やずれが持続する。また,こうした不具合な体位は,不快であるとともに筋緊張をまねく。患者・利用者の筋緊張の状態や自力で動ける力などを評価することが必要となる。

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