□"乳房パジェット(Paget)病"と"乳房外パジェット病"の両者にみられる表皮内明細胞(パジェット細胞)の存在から,臨床症状は類似し,両者をまとめて"パジェット(Paget)病"と呼ぶ。しかし,両者は異なる病態である1)。ここでは皮膚原発にみられる乳房外パジェット病を中心に述べる。
□乳房パジェット病:下床に腺癌病変を伴う乳頭部皮膚に進展した腺癌病変。
□乳房外パジェット病:皮膚表皮内に発生したアポクリン汗腺・Toker細胞*由来の腺癌様癌。
□さらに,乳房外パジェット病には皮膚原発性の乳房外パジェット病と,周辺の子宮,尿道,直腸,肛門などから経上皮的な癌細胞の表皮内浸潤,いわゆる"パジェット現象"で発生した二次性乳房外パジェット病がある。
□乳房外パジェット病は高齢者の外陰部,腋窩,肛門などのアポクリン腺の存在する部位に好発する。
□そう痒性紅斑から境界明瞭な淡紅褐色の斑状局面で始まり,湿疹皮膚炎との鑑別が難しい。その後,周囲に拡大し,境界が不明瞭になる(図1)。
□進行するとびらん,中央に硬結,結節を生じる。外陰部病変が浸潤癌に進行し,鼠径リンパ節転移がみられ,閉塞性癌性リンパ管炎を併発し,下着型の硬結を伴う紅斑(パンツ型紅斑)が生じる(図2)。
□同一患者に複数病変(陰部+腋窩など)を認めることがある。
□日本,韓国など東洋人に多く,欧米に少ない疾患。
□鑑別疾患として,湿疹皮膚炎(慢性湿疹,間擦疹,真菌,カンジダ皮膚炎),硬化性萎縮性苔癬,ボーエン病(pagetoid type)など。
□表皮内病変の時期には特異な検査所見は少ないため,他の皮膚癌と異なる進展様式を考慮した診断が必要。多面からの検査所見を総合し,治療計画を立てる。
□血清:進行例では血清CEA,LDHの上昇。
□画像CT:転移スクリーニング(所属リンパ節,肝,肺,骨),併発する閉塞性水腎症などの評価に有用。
□皮膚生検:確定診断,浸潤レベルの推定,二次性パジェット病の除外。
□mapping biopsy:境界不明瞭な病変での切除範囲の決定。
□免疫組織学的診断:HEで,表皮内の淡明細胞(パジェット細胞)の確認に合わせ,CEA染色,CK7染色,CAM5.2染色が有用。CK20,GCDFP-15(gross cystic disease fluid protein-15)は,消化器癌の二次性パジェット病(CK20陽性,GCDFP-15陰性)の鑑別に有用2)。
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