□加齢に伴う腱の変性を基盤として発生し,転倒などの外傷を契機として発症する場合と,特に外傷歴がなく発症する場合がある。
□肩から上腕の痛みと肩関節の可動域制限,肩周囲筋の筋力低下などにより肩の挙上困難をきたすが,損傷の程度によって病態は大きく異なる。
□肩の痛み:下記が挙げられる。
①動作時痛:手を伸ばしてものを取るとき,着替えや結帯動作など,特定の動作で痛みを感じることが多い。
②夜間痛:夜間就寝中に痛みで目が覚める。寝返り時や患側を下にして寝たときなどに痛みが強い。
□挙上困難:痛みや筋力低下のため,肩が挙上できなくなる。
□視診上,患側の三角筋,棘上筋,棘下筋に萎縮がみられる。
□凍結肩では筋萎縮はきたさないことが多いため,鑑別に役立つ。
□上腕骨大結節部に強い圧痛があることが多い。
□結節間溝に圧痛があれば,上腕二頭筋長頭腱に炎症が及んでいる可能性がある。
□肩を軽度伸展位(後方に引いた状態)とし,指で腱板の付着部を押しつけながら他動的に内・外旋する。
□腱板の欠損による陥凹(delle)が触知されれば,腱板損傷の可能性が非常に高い。
□痛みのために自動的な挙上や内外旋が制限されるが,通常,他動的には挙上できる。
□広範囲断裂*では筋力低下が強くなり,挙上位で腕を保持できなくなる(drop arm sign)。
□まったく挙上不能になると,偽性麻痺(pseudoparalysis)と呼ばれる。
□腱板損傷例では,肩関節の屈曲・外転・外旋筋力の低下がみられる。
□肩を自動的に挙上させると,大結節が肩峰の下をくぐり抜ける70~120°付近で痛みが出現し,この角度を超えると痛みが軽くなる。同様に,挙上位から下垂する際にも痛みを自覚する。
①Neerインピンジメント徴候:肩甲骨を頭側(上方)から押さえつけるようにしつつ,他動的に患肢の外転を強制すると,疼痛が誘発される(「§15-12」参照)。
②Hawkinsインピンジメント徴候:肩甲骨を上から押さえつけるようにしながら,肩屈曲・肘屈曲位で他動的に患側の肩を内旋させると,痛みを生じる(「§15-12」参照)。
□両肩を70~80°挙上位で,母指を下に向けた状態とする。検者が頭側(上方)から腕を押し下げるようにし,それに抵抗してその位置で保持させる。
□腱板損傷の患者では,筋力低下と痛みのために患肢を保持しておくことができない。
□頸部神経根症の鑑別に用いる。
□頭部を後側方に圧迫し,椎間孔を狭窄させて神経根に刺激を与える。
□陽性の場合,患側上肢のしびれ感や疼痛が再現される。
□腱板損傷に特異的な所見はない。
□上腕骨大結節部の骨硬化像や肩峰下面に骨棘がみられることが多い。
□広範囲断裂では関節窩に対して上腕骨頭が上昇し,肩峰─骨頭間距離の狭小化が起こる。
□外来で簡便に実施できる。
□腱板の走向に沿ってプローブを当てて観察すると,腱板全層断裂では輪郭の平坦化や陥凹がみられる。
□T2強調像で,損傷部が高信号に描出される(図1・2)。
□肩峰下滑液包に局所麻酔薬を注射して痛みが改善すれば,この部位に痛みの原因があると推測できる。
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