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手根管症候群[私の治療]

No.5255 (2025年01月11日発行) P.50

岩本卓士 (慶應義塾大学医学部整形外科学教室准教授)

登録日: 2025-01-10

最終更新日: 2025-01-07

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  • 手根管は,手関節部に位置する手根骨と屈筋支帯によって形成されるトンネル状の構造で,この内部を屈筋腱と正中神経が通過する。この手根管内で正中神経が何らかの原因で圧迫されることにより引き起こされる末梢神経障害を手根管症候群と言う。末梢神経が骨や靱帯で形成されるトンネルを通過する部位において圧迫を受けることで生じる障害を絞扼性神経障害と総称するが,手根管症候群は最多の絞扼性神経障害であり,日常診療で遭遇する機会も多い。

    ▶診断のポイント

    主な症状は,夜間に悪化する痛み,正中神経が支配する領域のしびれや感覚の低下,そして母指球筋の萎縮である。しびれおよび知覚障害は,母指から環指橈側に認める。特に,環指の感覚が橈側(正中神経支配)と尺側(尺骨神経支配)で異なる場合,「ring finger splitting」と呼ばれ,手根管症候群が強く疑われる。麻痺が進行して母指対立運動障害を生じると,患者に母指と示指で〇を作らせても母指の対立が困難であるために完全な〇が作れずに楕円となる(perfect O sign)。

    診断に有用な症状誘発テストとしては,Phalen test,Tinel様徴候がある。Phalen testは手関節を最大1分間掌屈させたときに症状が誘発されるテストである。Tinel様徴候は手関節掌側部で正中神経に沿ってタップすることで,正中神経支配領域に放散痛が誘発されるテストである。

    典型例ではこれらの臨床症状や身体所見で診断可能であるが,鑑別診断が必要な際には電気生理学的検査を補助診断として行う。

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