デュピュイトラン拘縮(Dupuytren’s contracture)は,手掌腱膜へのコラーゲンの過剰沈着が原因のひとつであり,線維芽細胞が発症に関与している。病態の進行とともに手指の屈曲拘縮をきたす。示指や中指よりも環指や小指などの尺側指から罹患する例が多い。わが国の疫学研究では40歳以上の7%に本症を認め,女性よりも男性に多く,加齢とともに発症率は上昇する1)。
問診と触診で診断が可能である。問診では家族歴,手の外傷の既往や関連する疾患(糖尿病など)を聴取する。診察において手掌の索状物や硬結とそれらに伴う指MP(中手指節)関節やPIP(近位指節間)関節の屈曲拘縮により診断される。症状として痛みはないか軽いことが多い。
Meyerding進行度分類(表)2)のGrade 0では経過観察のみ行う。屈曲拘縮が20°以上あり,日常生活に支障をきたしている場合に治療を考慮する。有効な治療は手術のみであったが,2015年にわが国においてコラゲナーゼによる酵素注射療法が承認され,治療の選択肢が増えた。しかし,コラゲナーゼは2019年6月に海外のメーカーから供給停止通告があり,2020年3月以降,日本市場において在庫が枯渇したため使用できない状態となった。そのため,2024年時点では再び手術のみが有効な治療となっている。
手術治療は,注射針を用いて経皮的に拘縮索を切離する方法(経皮的腱膜切離術)と,十分に病巣を展開して手掌腱膜ごと切除する方法(手掌腱膜切除術)の2種類に大別される。
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