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FOCUS:使いこなし骨粗鬆症治療薬〜作用機序,適応,効果,副作用から考える

No.5255 (2025年01月11日発行) P.9

福本誠二 (たまき青空病院名誉院長)

登録日: 2025-01-10

最終更新日: 2025-01-08

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たまき青空病院名誉院長

福本誠二

1982年東京大学医学部医学科卒業。1990年東京大学大学院医学系研究科修了。東京大学医学部附属病院分院第四内科,東京大学医学部附属病院分院検査部,東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科,徳島大学先端酵素学研究所などを経て,2023年より現職。内分泌学,特に骨・ミネラル代謝異常症の病因の解明や治療法の開発に取り組んでいる。

私が伝えたいこと

◉骨粗鬆症治療にあたっては,作用機序の異なる多くの薬剤が使用可能となった。

◉一部の骨粗鬆症治療薬の適用は,特定の骨粗鬆症患者,一定の期間に限定されている。

◉長期にわたる骨粗鬆症治療においては,薬剤の効果に加え副作用にも留意する必要がある。

❶ 骨の構造と機能

硬組織である骨は,姿勢の保持や運動の支柱,内臓・中枢神経系の保護臓器として機能している(1)。骨がその構成成分のひとつである胸郭は,胸腔内を陰圧にすることにより呼吸に役立っている。また骨は,中耳における音の伝搬にも必要である。これに加え骨は,体内のカルシウムの約99%,リンの約80%を含む,カルシウムやリンの貯蔵庫としても機能している。一方,骨は骨髄を内包し造血にも必須であることに加え,線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23:FGF23)を産生する。FGF23は,血中リン濃度やビタミンD代謝を調節するホルモンである。したがって骨は,内分泌臓器としての機能も有している。

FGF23
生理的には骨細胞により産生され,腎臓近位尿細管でのリン再吸収と,1,25-水酸化ビタミンD濃度の低下を介した腸管リン吸収の抑制から,血中リン濃度を低下させる。FGF23の過剰活性による低リン血症性くる病・骨軟化症は,FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と総称されている。逆に,FGF23の作用障害は,高リン血症と異所性石灰化を特徴とする高リン血症性腫瘍状石灰沈着症の原因となる。

成人体内には,200個以上の骨が存在する。構造上骨は,皮質骨と海綿骨にわけられる(1)。全体では,成人体内の骨の80%を皮質骨が,20%を海綿骨が占めている1。一方,皮質骨と海綿骨の比率は,それぞれの骨により異なる。たとえば,海綿骨は椎体では75%を占めるのに対し,大腿骨頭では50%,橈骨骨幹部では5%である1。皮質骨と海綿骨の形態の相違から,後述の骨リモデリングが生じる骨表面の面積は,皮質骨では約3.5m2,海綿骨では約7.0m2と推定されている1。成人の骨量は,通常,骨リモデリングによってしか変化しない。したがって骨量の変化は,一般的には皮質骨の比率が高い骨に比較し,海綿骨を多く含む骨でより顕著に認められる。

❷ 骨の細胞と骨リモデリング

多様な機能を果たすため,骨は骨吸収と骨形成を繰り返す骨リモデリングを常に行っている(2)。この骨リモデリングでは,骨吸収が起こった部位に,ほぼ同量の骨形成が惹起される。これを,骨吸収と骨形成のカップリングと呼んでいる。このカップリングの機序は,完全には解明されていない。骨吸収に伴い,骨基質中に存在するtransforming growth factor-βやインスリン様成長因子などの液性因子が放出され骨芽細胞に作用すること,破骨細胞が産生するセマフォリン4Dやsphingosine-1-phosphate(S1P)などの液性因子が骨形成に影響することなどが,カップリングの機序として想定されている。

骨吸収を担う細胞が,造血幹細胞に由来する多核巨細胞である破骨細胞である。この破骨細胞の形成や活性には,骨芽細胞系細胞に発現するreceptor activator of nuclear factor-κB ligand(RANKL)が,破骨細胞系細胞のRANKに結合することが必要である。したがって,RANKL-RANKシグナルの阻害は,破骨細胞の形成や活性を抑制し,骨吸収を低下させる。

一方骨芽細胞は,間葉系幹細胞に由来する。骨芽細胞が産生,分泌する1型コラーゲンを主とする骨基質蛋白に,ハイドロキシアパタイト〔Ca10(PO46(OH)2〕結晶が沈着することにより,硬組織としての骨が形成される。この骨石灰化では,骨芽細胞から出芽する基質小胞内で,カルシウムとリンからハイドロキシアパタイト結晶が形成される。この際,組織非特異的アルカリホスファターゼは,石灰化抑制作用を有するピロリン酸をリンに変換することにより,石灰化に必須の役割を果たしている。このため,組織非特異的アルカリホスファターゼ遺伝子不活性型変異は,骨石灰化障害を特徴とする低ホスファターゼ症の原因となる。

低ホスファターゼ症
本症は,常染色体顕性,あるいは潜性遺伝形式を示す疾患である。病型には,周産期重症型,周産期良性型,乳児型,小児型,成人型,歯限局型が知られている。遺伝性疾患ではあるが,成人で診断される場合もある。

さらに骨基質中に埋没し,骨芽細胞が最終分化した細胞と考えられているのが,骨細胞である。骨細胞は,骨への力学負荷を感知する細胞と考えられている。骨細胞は,突起を伸ばして骨細胞や骨芽細胞と接触することに加え,FGF23やスクレロスチンなどの液性因子を産生し,骨や他臓器の機能を調節している。

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