□第1肋骨,鎖骨,斜角筋で形成される胸郭出口およびその近傍における腕神経叢,鎖骨下動静脈の圧迫や牽引によって生じた上肢の痛みやしびれを有する疾患群である1)2)。
□血管障害が主症状である血管性は少なく,約95%が腕神経叢刺激過敏状態を呈する神経性であり,原因としては圧迫要素だけでなく,牽引要素の関与も重要である3)。
□圧倒的に女性に多く(男性:女性=1:11),なで肩・円背姿勢を呈し,肩甲骨の易下垂性がみられ,若年者に多い。
□上肢下垂時に症状が強く,重量物を持つなどの上肢下方牽引により増悪する。肘掛け椅子に座るなど上肢・肩甲帯を保持することで症状が改善する。
□斜角筋三角上方部に放散痛を伴う圧痛を認める。上肢・肩甲帯挙上保持により軽減ないし消失する。
□胸郭出口における腕神経叢の牽引刺激により生じ,この牽引刺激を取り除くと症状が改善するという可逆的障害である。
□上肢症状以外の症状としては,上肢の酷使や不良姿勢に起因する項頸部から肩あるいは背部に至る痛みが多い。また,腕神経叢終末枝である肩甲上神経と腋窩神経の刺激症状が多く,肩外転・外旋時の易疲労感,quadrilateral spaceの圧痛がある。
□併発した自律神経障害に起因する手指のうっ血・蒼白や浮腫などの局所と頭痛,嘔気,めまい,全身倦怠感などの全身症状がある4)。
□男性に多く(男性:女性=2:1),筋肉質で怒り肩を呈し,肩甲帯の不安定性はない。
□上肢挙上により症状の増悪がある。
□肩関節を90°外転外旋し肘関節90°屈曲位に保持すると,症状の再現や増悪がある。
□鎖骨上窩における圧痛や上肢への放散痛がある。肋鎖間隙における腕神経叢の圧迫により生じる症状である。
□腕神経叢牽引型胸郭出口症候群:斜角筋部におけるTinel徴候,上肢下方牽引症状誘発テスト,上肢保持症状軽快テストは有用性が高い3)5)。
□腕神経叢圧迫型胸郭出口症候群:鎖骨上窩におけるTinel徴候と,90°外転外旋位症状誘発テストは有用性が高い3)5)。
□脈管圧迫テスト:各種肢位による肋鎖間隙における鎖骨下動脈の圧迫を見る脈管圧迫テスト(Adsonテスト,Wrightテスト,Edenテスト)は,簡便な他覚的検査法である。
□電気生理学的検査:肘部管症候群,手根管症候群を鑑別する。
□画像診断:頸椎単純X線とMRIで頸肋・第一肋骨奇形の合併や頸椎疾患の鑑別を行う。
□保存療法が無効な場合,鎖骨下動脈の3D─CTを行い,上肢下垂位と挙上位で撮影し,挙上時の血管圧迫を確認する。
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