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膝蓋骨不安定症[私の治療]

No.5270 (2025年04月26日発行) P.40

新井祐志 (京都府立医科大学大学院医学研究科スポーツ・障がい者スポーツ医学准教授)

藤井雄太 (京都府立医科大学大学院医学研究科運動器機能再生外科学)

中川周士 (京都府立医科大学大学院医学研究科スポーツ・障がい者スポーツ医学講師)

登録日: 2025-04-27

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  • 膝蓋骨不安定症とは,膝蓋骨が大腿骨滑車から逸脱する状態であり,膝蓋骨脱臼から移行することが多い。膝蓋骨脱臼の発生頻度は10万人当たり5.8~29人で若年者に比較的多く1),性差は女性にやや多い。膝蓋骨脱臼の形態として外傷性,反復性,習慣性,恒久性に大別され,脱臼素因には軟部組織因子,骨性因子,アライメント異常があり,それぞれが複雑に絡み合って膝蓋骨の安定性に影響を及ぼす。

    ▶診断のポイント2)

    膝蓋骨不安定症を呈する患者の重症度は一様でなく,問診から理学所見および画像所見を含め様々な観点から病態を評価し診断することが重要である。

    【問診】

    膝関節痛,腫脹,変形などを主訴とする。膝蓋骨脱臼が生じた原因として,交通事故やスポーツ活動中の他人との接触などで強い外力が加わったのか,あるいは日常生活でのしゃがみ動作や捻っただけといった軽微な外力なのか,原因となった動作を聴取する。膝蓋骨脱臼が初回なのか,複数回なのかも聴取する。

    【理学所見】

    膝蓋骨は仰臥位や立位で外側に亜脱臼しやや偏位していることが観察されるが,外傷性膝蓋骨脱臼では自然整復されることも多い。膝を自動あるいは他動で屈伸させ,膝蓋骨の内外側の偏位を観察する。膝蓋骨を用手的に内側から外側に押し出し,膝蓋骨の不安定感を訴えるかどうか誘発テストを行う。上下肢各関節の可動域を計測し,全身弛緩性がないかを確認する。

    【画像所見】

    膝関節だけではなく下肢全体の骨性形態異常の評価も行う。単純X線検査では通常の膝関節3方向(正面像,側面像,軸写像)に加えて,可能であれば下肢全長も撮影する。膝蓋骨のアライメントや高さ,大腿骨滑車の形態,下肢アライメントについて評価する。CT検査では,膝関節伸展位での膝蓋骨の適合性,脛骨粗面の位置,大腿骨から脛骨までの捻れを評価する。MRI検査では膝蓋骨脱臼で高率に損傷される内側膝蓋大腿靱帯(MPFL) や骨挫傷,骨軟骨損傷の評価を行う。

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