二分脊椎症は発生学的に神経管閉鎖障害に起因する先天性脊椎・脊髄奇形である。その原因として栄養因子(葉酸不足),環境因子,遺伝因子が関与すると言われている。特に栄養因子においては妊娠前からの葉酸摂取で7~8割の発生を予防できると報告されているが,わが国ではいまだ予防的手段が十分とられているとは言いがたく,先進国の中でも群を抜いて発生頻度が高いままである。病状の程度から潜在性,顕在性の2種類にわけられ,発生部位と程度から,神経症状がまったくみられない状態から下肢麻痺まで臨床症状には症例ごとに差がある。整形外科領域で問題となるのは,神経障害による歩行障害,足部を含めた下肢変形と褥瘡,脊柱側弯/後弯変形である。
脊柱変形には大きく3つのタイプがある(神経筋原性側弯,先天性側弯症,角状後弯)。診断は,顕在性の場合には生下時に容易に可能で,早期閉鎖術が必要となる。潜在性の症例では単純X線写真(正面,側面)とMRIで診断する。どのタイプにしても程度の差こそあれ脊髄係留を伴っていることが多く,多くの症例で水頭症,Chiari奇形,脊髄空洞症を合併する。
髄液灌流障害も生じるため,当初は脳神経外科で閉鎖術や水頭症シャント術が行われ,その後遺残神経症状によって生じる運動器の障害に対する治療目的で整形外科を受診する。整形外科で取り組まなければならない病態は,弛緩性麻痺,足部を中心とした下肢の変形,骨盤傾斜,側弯,後弯変形,背部褥瘡などである。その機能障害は神経障害の高位と程度からSharrard分類を用いて評価される。背部褥瘡は皮膚科,形成外科へ依頼しながらその原因となる角状後弯変形の治療を検討する。また,脊柱変形が高度な場合には胸郭変形も合併するようになり,拘束性換気障害から生命維持にも影響を与える症例も少なくない。
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