□骨形成不全症とは,易骨折性,進行性の骨変形などの骨脆弱性症状に加え,様々な程度の結合組織症状を示す先天性疾患である。発生頻度は2万~4万人に1人で,骨系統疾患の中では最も頻度が高い。
□一般的には結合組織の主要な成分であるⅠ型コラーゲンの遺伝子変異が原因で発症するが,Ⅰ型コラーゲン遺伝子に異常を認めない症例も存在する。近年,それらの責任遺伝子が続々と見つかっている。
□骨形成不全症の臨床像は非常に多彩であり,生まれてすぐに死亡する致死型から,生涯にわたり明らかな症状がなく偶然発見されるものまである1)。
□Sillence分類(表)2)は現在最も広く使用されている臨床分類で,疾患の重症度を把握することが可能である。古典的にはⅠ~Ⅳ型に分類するものであったが,近年になって,I型コラーゲン遺伝子に異常を認めない非典型例が追加されている。
□臨床症状には骨脆弱性,易骨折性,四肢変形・脊柱変形に加え,成長障害,低身長,青色強膜,歯牙(象牙質)形成不全,難聴,多汗などがある。知能は正常である。
□骨癒合能力は正常であるが,骨改変(remodeling)は遷延する傾向にある。繰り返す骨折とその変形治癒によって長管骨に変形を生じる。
□膜性骨化が障害されるため,骨密度は低く骨皮質が薄い。特にover modelingのために骨幹部が細くなる。繰り返す骨折の変形治癒により長管骨には弯曲変形があり,胸郭変形・脊柱側弯を伴う。頭蓋骨の骨化は遷延し,wormian骨が存在する。
□重症例(図)では子宮内で無数の骨折を繰り返し,その結果長管骨が細く,生下時より念珠様肋骨,アコーディオン様長管骨を呈する。頭蓋冠は膜性骨化不全のため膜様頭蓋を呈する。軽症例では軽度の骨粗鬆,長管骨の軽度の弯曲を示すだけの例もある。
□診断は比較的容易で,重症例では胎児期や出生時に骨折を生じることで新生児期に診断がつくことが多い。軽症例では活発に運動するようになる幼児期や学童期に,軽微な外傷で骨折を生じることや,骨折を繰り返すことで初めてこの疾患が疑われることもある。
□他の骨密度低下を伴う疾患や易骨折性を呈する疾患,骨変形を生じる疾患(低アルカリフォスファターゼ症,線維性骨異形成症,低リン血症性くる病,先天性無痛無汗症,屈曲股骨異形成症,特発性若年性骨粗鬆症など)との鑑別が必要である。
□新生児期や乳児期に骨折が生じると医療事故として扱われることや,虐待による骨折と間違われることがある。小児虐待を早期に発見し予防を行うことは社会的に非常に重要であるが,一方で間違った診断が家族間の信頼関係を損ねる可能性を持っており,その鑑別は非常に重要である。
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