□疲労骨折とは,ごく小さな外力が繰り返し作用する結果,骨に微小骨折様変化をきたし,時には完全骨折に至ることもある病態を指す。
□陸上競技選手,特に中長距離選手に多くみられるが,いわゆるランニング障害であり,どのような競技でも走ることによるoveruse(酷使)により生じる。
□脛骨(図1),中足骨(図2)で約7,8割を占めるが,使いすぎにより上肢,体幹にも生じる(図3)。
□好発年齢は10歳代,16,17歳にピークがある。スポーツ復帰までには長期(2,3カ月)を要する。
□女子中長距離ランナーに多く発症する。「女性アスリートの三主徴(female athlete triad)」である,①エネルギー不足,②月経不順,③低い骨密度が関係することが多い。
□女子においては,摂取する食事量のエネルギー不足により体調不良を生じ,視床下部性の月経異常・無月経により女性ホルモンの分泌不足を生じる。それに伴い,骨形成作用のある女性ホルモン不足から骨密度の動態は負に傾き,骨粗鬆症傾向になる。
□男子においても,たとえば全日本高校総体(いわゆるインターハイ)出場レベルでは疲労骨折は14.0%に生じている。
□ランニング時の患部の痛みを特徴とするが,ジャンプのくり返しなどでも生じる。
□局所の圧痛を特徴とする。
□単純X線像は重要である。通常,発症後1~4週程度で淡い骨膜反応がみられ,それが横走する帯状の骨硬化像を呈し,最終的には骨皮質の肥厚・硬化像を呈する。一方,跳躍型の疲労骨折では初期に骨改変層,亀裂様陰影を呈するのが特徴である。
□特に脛骨中下1/3の症例では,骨膜反応や骨の異常像がみられないときにはシンスプリントとの鑑別を要する。
□早期診断は早期治療・スポーツ復帰につながり,重要である。筆者の以前の調査では,早期診断がなされた症例は平均3週早くスポーツに復帰している1)。
□早期診断に用いるのはMRI,骨シンチグラフィーである。MRIは疲労骨折の早期診断に有用ではあるが,疲労骨折のすべての部位に有用なわけではない。一方,骨シンチグラフィーは,骨の何らかの代謝活性を鋭敏に反映し,その陽性率は,たとえ疼痛発症後2週以内においても全例にみられた。
□骨代謝マーカーは,比較的容易に採取できる血液や尿で測定ができ,非侵襲的で定量性も高く,しかも全身の骨代謝動態をリアルタイムで評価できる利点がある。
□代表的な骨形成マーカーは骨型アルカリフォスファターゼ(BAP),P1NP,骨吸収マーカーとしてⅠ型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX),酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRACP-5b)など。高齢者以外には保険適用がきかないのが欠点である。
□NTX(Cr換算値):疲労骨折の判明前に上昇していることがある2)。疲労骨折発症時,NTXは高値を示し,臨床症状の軽減とともに改善が得られた。疲労骨折発症予測因子の1つとなりうる可能性がある。
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