□肩は全関節の中でも最も脱臼しやすい。肩関節脱臼の98%が前方脱臼であり,ここでは前方脱臼について述べる。
□一度前方脱臼を起こすと,若年者では再脱臼しやすくなることが臨床上大きな問題である。脱臼後にはできるだけ速やかに整復する。
□整復後の固定肢位は,従来行われてきた内旋位固定は再脱臼防止という点では無効であることが証明されている。外旋位固定を行うと再脱臼の頻度を下げることができるが,不自然な肢位での固定であるため,コンプライアンスを高めることが課題である。
□手術療法が最も確実な方法だが,再脱臼の危険度や患者の要望に応じて適応を判断する必要がある。脱臼を繰り返す反復性脱臼に対する有効な治療法は手術のみとなる。
□脱臼直後には激しい疼痛があり,痛みのため患側上肢を動かすことができない。脱臼した瞬間に患者は肩関節が外れたことを自覚する場合が多い。
□初診時には上肢は軽度外転位で固定肢位をとり,痛みのために自動運動は当然ながら,他動的に動かすことも困難である。
□肘や手指の運動・知覚には異常を認めないことが多いが,腋窩神経麻痺を合併すると三角筋の筋力低下や肩外側部の知覚鈍麻を認める。上腕骨頭が前方に偏位するために,正常でみられる肩峰外側の肩の膨らみが消失する。
□X線で骨頭の前方脱臼を確認する。大結節などに明らかな骨折がないことが確認できたら,整復操作を行う。
□初回脱臼および反復性脱臼に対して手術療法を選択する場合には,MR関節造影,3D-CTを行い,軟部組織損傷,骨損傷の部位と大きさを判断する。
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