□前立腺炎症候群は,男性で最も罹患頻度の高い炎症性疾患である。
□前立腺炎の分類は,現在はNIH(National Institutes of Health)分類(表)が広く研究および実臨床に用いられる。
□前立腺炎症候群は50歳未満の男性の前立腺疾患で最も頻度が高く,50歳以上の前立腺疾患としては,前立腺肥大症,前立腺癌についで多い。
□通常は細菌性前立腺炎の割合は5~10%と低い。カテゴリーⅢ前立腺炎は,20歳以上の男性では2~12%に自覚症状を認めるとされ,9~16%の男性が慢性前立腺炎の診断を受けるとされている。
□悪寒戦慄を伴う発熱,全身倦怠感,嘔気(嘔吐)などの全身症状と,排尿痛,尿意切迫,頻尿,排尿困難,会陰部不快,疼痛などの局所症状にわかれる。ほかに,会陰部痛や恥骨上部痛なども認める。
□下腹部から会陰,陰嚢,尿道など,陰部を中心とした疼痛ないしは不快感のほかに,頻尿,排尿時不快感などの排尿症状や射精時痛など多岐にわたる。局所所見は乏しく,急性増悪時以外は炎症反応を認めることも少ない。
□臨床症状はカテゴリーⅡと大きな違いはないが,定義上は明確な病理学的要因がないものの,持続的な骨盤痛を主体とした症状が6カ月間のうち3カ月は持続し,種々の排尿,性機能障害を伴うものとされる。
□主たる症状は痛みであるが,射精後痛は有意な症状の1つとされる。痛みには灼熱感から不快感まで幅広く様々な程度がある。
□直腸診で前立腺の圧痛,腫脹,熱感を認める場合に本疾患を疑う。
□本症を疑う場合には,前立腺マッサージは敗血症を惹起する可能性があり禁忌とされる。
□尿所見では,中間尿で白血球尿および細菌尿を認め,全身的炎症反応として末梢血白血球数および好中球数の増多,CRP値上昇を認める。
□原因菌は,尿路基礎疾患がなければグラム陰性桿菌がほとんどであり,Escherichia coliが6割を占める。基礎疾患がある場合や尿路操作後の場合にはPseudomonas aeruginosa,Klebsiella pneumoniaeなどほかのグラム陰性桿菌や,MRSAなどのグラム陽性球菌も関与する。
□中間尿検尿では白血球尿や細菌尿を認めない。EPSもしくはVB3で有意な白血球数,もしくは細菌尿を認める。
□原因菌は,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌やEnterococcus faecalisを主としたグラム陽性球菌が多いとされる。
□EPSもしくはVB3所見で有意な細菌を認めないことがカテゴリーⅡとの鑑別点である。
□カテゴリーⅢは症状のみで診断を行うのではなく,最終的には除外診断で決定されることが多い。
□尿路性器および骨盤内感染症,肛門周囲疾患,前立腺肥大症,骨盤内悪性疾患,精神疾患,間質性膀胱炎などとの鑑別を要する。
□前述のように,カテゴリーⅢは多要因性の症候群と考えられており,現在は症状の表現型によって分類し,治療方法を検討するUPOINT*(S)の概念1)が広まりつつある。ただし,診断のツールではなく,あくまで治療方針を決定するためのツールであることに留意する。治療効果はNIH-CPSIと称される症状スコア2)で判定する。
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