□眼瞼は,皮膚と眼輪筋からなる前葉と,瞼板およびその中に存在する脂腺であるマイボーム腺と瞼結膜からなる後葉とからなる。腫瘍はそれらのいずれの組織からも生じうる。
□代表的な眼瞼悪性腫瘍は,マイボーム腺から生じる脂腺癌と,皮膚より生じる基底細胞癌である。
□瞼の膨らみが症状の大部分であり,通常,痛みはない。
□腫瘍が増大すると視界を遮って,視力低下や,眼球圧排による複視を生じることがある。
□視診および細隙灯顕微鏡検査にて眼瞼に充実性腫瘤がみられ,悪性の場合には多くの例において不正形の突出,捷毛脱落,血管増生などを伴う。
□皮膚由来の腫瘍は特に初期では皮膚自体の変化であり,マイボーム腺由来のものと異なり,瞼板と別に動くことが可能となる。マイボーム腺からなるものは,瞼そのものの中に腫瘍が存在する。
□脂腺癌では瞼板内の脂腺であるマイボーム腺由来がほとんどであり,脂肪の色,すなわち黄色を呈することが多い(図1)。
□基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC)は眼瞼の皮膚から生じ,堤防状変化や,色素によって黒色を呈する部分,潰瘍形成によって凹みを呈するなどの所見がみられる(図2)。
□扁平上皮癌(squamous cell carcinoma:SCC)は,眼瞼においてはBCCや脂腺癌より頻度が低い。皮膚よりも瞼結膜に多く生じ,皮膚-結膜移行部などにもみられることがある。乳頭様構造を伴って血管に富み,赤みを帯びる(図3)。口腔内のものと同様に,白板状変化を生じることもある。また,SCCの前病変である上皮内癌(carcinoma in situ:CIS)もみられる。
□転移は通常所属リンパ節へ生じ,耳前リンパ節,ついで顎下リンパ節への転移が多く,転移部位のリンパ節に無痛性の腫脹を生じる。
□血管腫などの血管系腫瘍,およびピンク色を呈する悪性リンパ腫や,reddish sausage-shaped lesionが特徴的なメルケル(Merkel)細胞癌など,赤色を呈するものもある。
□霰粒腫との鑑別は重要で,真の腫瘍では炎症所見が少ない,マイボーム腺開口部の閉塞がみられない,ドーム状ではない不正形の突出,周囲の血管増生などの所見がみられる。逆に霰粒腫では瞼結膜のベルベット状の炎症と,マイボーム腺開口部方向への突出,上眼瞼では閉塞した開口部の皮膚がハングオーバーする形状などを呈し,また炎症によって皮膚がカサカサになることもしばしばみられる。
□アドバンスケースでは,眼窩内浸潤の有無についてMRIを,頸部リンパ節転移の有無には頸部超音波およびCTがそれぞれ有用である。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより