□眼瞼内反症は,高齢者に多くみられる疾患である。
□原因は,加齢による下眼瞼牽引筋腱膜の断裂や弛緩によると考えられる。
□眼瞼全層が内反して睫毛や皮膚が角膜に接触するため,異物感や不快感を感じる。主な鑑別診断は睫毛内反である。
□内反の症状として,睫毛や眼瞼が角膜に接触し角膜を傷つけるために,異物感,眼脂,まぶしさ,流涙などの自覚症状を訴える。重度になれば角膜混濁をきたす場合もある。症例の多くが高齢者である(図1)。
□内反を引き起こす原因箇所は下眼瞼牽引筋腱膜・眼輪筋瞼板部・眼輪筋隔膜部である。
□内反の最も大きな原因は,下眼瞼牽引筋腱膜の断裂である。そこへ,瞼板を横方向に引く眼輪筋瞼板部が加齢により弛緩するという要素が加わり,症状の引き金となる。最終的には,瞬目する際に眼輪筋隔膜部が瞼板を乗り上げて瞼縁側まで来ることで内反が完成する。これら3つの組織の異常のいずれか,またはすべてを整復すれば,内反は治療できる。
□下眼瞼翻転による検査:患者を坐位の状態で正面視させ,下眼瞼の皮膚を指で下方へ引き下げ"あかんべえ"の要領で翻転する(図2)。内反がない症例では,下眼瞼を下方へ引いた際に瞼結膜が露出される(図2a)。これは下眼瞼牽引筋腱膜が瞼板下縁に付着して,蝶番の役割を果たしているためである。内反がある症例では,下眼瞼を下方へ引いた際にそのまま下方に引かれて溝が形成される。また,眼瞼結膜が露出されず,円蓋部の結膜が膨張して見える(図2b)。これは,下眼瞼牽引筋が断裂し蝶番の役割を果たしていないためである。
□snap backテスト:下眼瞼の皮膚をつまみ上げ,手前に引いて下眼瞼を眼球より離す。下眼瞼の皮膚が戻る速さを観察して横方向の弛緩を判断する。
□pinchテスト:下眼瞼の皮膚をつまみ上げ,瞼縁が眼球表面からどれだけ離れるか観察する(図3)。離れるほど内反になりやすく,術後の再発も多い。
□臥位誘発テスト:仰臥位にすることで重力の方向が変わるため,内反が誘発されることになる
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより