□耳管は通常は閉鎖していて,必要に応じて開閉するが,この絶妙のバランスが乱れることがある。耳管開放症は閉鎖の障害であり,その逆に耳管狭窄症は器質的あるいは機能的な開大の障害である。両者の症状は類似しているが,仰臥位・前屈位での改善が耳管開放症の特徴であり,両者の鑑別に役立つ。
□自声強聴,呼吸音聴取,耳閉感などのいずれか,またはすべてを呈する1)2)。鼻声を訴えることも多い。これらの症状は臥位あるいは前屈位で軽快するが,1日のうちでも変化がある。
□開放した耳管を介して,発声時に自分の音声が過大に中耳に達するため,自分の適正な発声がわからなくなり,コミュニケーション障害をきたす。重症になると社会的活動ができなくなり,うつ状態となることもある1)2)。
□呼吸に伴う鼓膜の動揺がみられれば,診断は確定する(診断基準3)上の確実例)。鼓膜の呼吸性動揺は,開放した耳管を通じて鼻咽腔圧の変化が中耳腔に及ぶことによる。しかし,受診時に症状がなければこれがみられず,診断が確定しない。その場合でも,症状が体位によって軽減する事実が問診できれば,本疾患の疑いは濃厚となる(診断基準3)上の疑い例)。したがって,体位と症状の関係についての問診は忘れずに行うべきである。
□症状があるときの聴力検査では,低音部に軽度の難聴を呈することがある4)。症状があるときには,耳管機能検査5)で耳管開放を示唆する所見を呈することが多く,坐位CTを撮影すれば耳管開放所見が得られる。
□難聴,耳閉感,自声強聴などを呈する。鼓膜に小穿孔が生じ,慢性の耳漏が出現することもある。平時は無症状で,飛行機搭乗や潜水などの非常圧環境下における耳管開大障害も耳管狭窄症とされることがあり,機能的狭窄と言うべき状態である。
□鼓膜は内陥または液貯留があり,聴力検査で難聴,ティンパノグラムでC2型,B型などの異常を認める。耳管通気圧が高いことで耳管開放症と鑑別できる。耳管が完全に閉塞すればコレステリン肉芽腫が形成される。その診断にはCTとともに側頭骨MRIを行う。コレステリン肉芽腫ではT1,T2ともに高信号を呈する。
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