□声帯そのものにはっきりした異常がみられない音声障害として,痙攣性発声障害や機能性発声障害などがある。痙攣性発声障害は特徴的な声の異常をきたす障害であるが,機能性発声障害と鑑別が難しいこともある。機能性発声障害は喉頭に器質的病変はないが,声の濫用や心因などにより発声様式に異常をきたすものである。代表的なものは心因性失声で,心因性ストレスが原因で急に失声状態になる。変声障害は変声期の声の変化がうまく行かず,特に声の高さ(ピッチ)に障害をきたすものである。
□構音障害,特に開鼻声は萎縮性側索硬化症などの重篤な神経筋疾患の初発症状として現れることがあるので注意が必要である。
□原因はなお不明な点が多いが,発声時の局所性ジストニアと言われている。内転型と外転型があるが,ここでは圧倒的に多い内転型について述べる。
□特徴的な声のつまり,途切れ,震えなど努力性あるいは圧迫性発声がある。
□声帯にはっきりした異常はないものの,不適切な発声法や習慣からの発声の異常をきたすもので,心理的要因が関与していることが多い。
□代表的なものとして心因性失声がある。これは精神的ストレスに対する転換性障害とされ,会話では高度の気息性,無力性発声となるが,咳払いや笑ったときには有響音が出るのが特徴である。
□過度な発声努力による,喉詰め発声を特徴とする過緊張性発声障害もしばしばみられる。このようなものは発声時の筋緊張異常としてとらえ,筋緊張性発声障害(muscle tension dysphonia)とする考え方もある。
□変声障害は思春期の男子にみられる障害で,変声期の過程が正常でなく,声が高いままであったり,声が安定せず,声のかすれや声の翻転がみられたり,大きい声が出ないなどの症状が現れる。基本的には喉頭筋の協調運動障害と考えられるが,心理的要因が関与している場合もある。
□構音障害の機序から,器質性構音障害,運動障害性機能障害,機能性障害などに分類される。
□日常臨床で注意しなければならないのは,口蓋裂(特に粘膜下口蓋裂)や先天性鼻咽腔閉鎖不全に伴う開鼻声や口蓋化構音などの構音異常,重症筋無力症や筋萎縮性側索硬化症などの神経筋疾患で生じる開鼻声などの異常構音,小児での側音化構音鼻咽腔構音などの構音異常や歪み,省略,置換などの音の誤りである。
□内視鏡:発声時に喉頭の痙攣様異常運動がみられるが,非発声時には特に異常はみられず構音機能も正常である。
□痙攣性発声障害を疑った場合,機能性発声障害との鑑別のため,言語聴覚士による音声治療を行ってみる。痙攣性発声障害では音声治療はほとんど効果がないとされており,音声治療で改善がみられれば機能性発声障害として,そのまま音声治療を続ける。
□同様な疾患として本態性音声振戦症がある。これは声の震えが周期的(5Hz前後)であり,強く声帯が閉鎖することはないので鑑別可能である。
□喉頭内視鏡:心因性失声では,発声時の声門閉鎖不全がみられるが,咳払いでは十分に声門が閉鎖し,声帯振動が起こる。
□内視鏡:過緊張性発声障害では,声門の強い閉鎖や声帯の前後径の短縮が特徴である。
□構音障害の診断は主に聴覚判定や視診によるが,開鼻声に関しては鼻息鏡検査や内視鏡による鼻咽腔閉鎖の観察が重要である。
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