編著: | 横田知哉(静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 医長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 208頁 |
装丁: | 口絵カラー |
発行日: | 2021年03月15日 |
ISBN: | 978-4-7849-5980-8 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
▪標準治療とエビデンスの向こう側
第1章:局所進行例の治療
1 根治的化学放射線療法の治療方針
Q1 ハイリスクStageⅡ喉頭癌 RT単独? CRT?[濵内 諭]
Q2 CDDP投与不適とは? CDDP不耐例へのCRTレジメンの選択[濵内 諭]
Q3 頭頸部癌・食道癌の重複症例に対する対応[瀧浪将貴]
Q4 照射歴のない術後局所再発に対するRTにCDDP併用は必要か? 再発術後アジュバントにCRTは必要か?[河合貞幸]
2 化学放射線療法全般の支持療法
Q5 胃瘻管理のFAQ[木村英憲]
Q6 CRT中の口腔粘膜炎対策[濵内 諭]
Q7 放射線皮膚炎に対する対応 動画あり[横田知哉]
Q8 セツキシマブ併用放射線療法(BRT)における栄養管理[横田知哉]
3 根治的化学放射線療法の管理
Q9 高用量CDDP併用CRTによって腎障害を起こさないための管理[川平正博]
Q10 CRT中にせん妄が起こった場合に考えるべきこと[横田知哉]
Q11 CRT中に発熱したときの対応,根治的CRT中の誤嚥性肺炎[河合貞幸]
Q12 CRT中に腎機能が低下してCDDPが入らない場合の対応[横田知哉]
4 画像検査
Q13 CRT後の画像評価のタイミングと検査方法[横田知哉]
5 術後化学放射線療法の治療方針
Q14 T4a舌癌の術後治療[横田知哉]
6 術後化学放射線療法の管理
Q15 胃瘻造設の適応,喉頭摘出後の胃瘻の要否[木村英憲]
7 導入化学療法(ICT)
Q16 導入化学療法の適応[横田知哉]
Q17 TPF療法における管理[川平正博]
Q18 TPF療法不耐例に対するPCE-ICT[白数洋充]
Q19 ICT(TPF療法)後の最適なconcurrent CRTレジメンとは[濵内 諭]
Q20 上咽頭癌に対するICT[白数洋充]
8 HPV陽性例の治療方針
Q21 HPV関連中咽頭扁平上皮癌では治療方針を変えるべきか?[横田知哉,鬼塚哲郎]
〈忘れてはならない〉 化学療法による有害事象① 5-FUによる意識障害,心筋虚血[川平正博]
第2章:再発・転移例の治療
1 再発・転移扁平上皮癌の治療方針
Q22 再発・転移頭頸部癌の予後予測因子[西村 在]
Q23 プラチナ感受性例に対する一次治療のレジメンは何を根拠に選択するか?[横田知哉]
Q24 プラチナ製剤に不適・不応例に対する対応[清水 康]
Q25 ペムブロリズマブ/ペムブロリズマブ+化学療法後の二次治療レジメンの選択[清水 康]
Q26 肺転移のみ有する場合の管理[西村 在]
Q27 肝転移に対する管理[西村 在]
Q28 全身状態良好で標準治療にすべて不応となった場合の治療は?[横田知哉]
Q29 抗EGFR抗体薬の再導入[木藤陽介]
Q30 放射線の再照射〈考慮してよい場合/悪い場合〉[尾上剛士]
2 再発・転移上咽頭癌の治療方針
Q31 再発転移上咽頭癌に対するGEMの適応外申請[濱内 諭]
3 免疫チェックポイント阻害薬
Q32 腫瘍サイズと免疫チェックポイント阻害薬の効果[井上博登]
Q33 免疫チェックポイント阻害薬の有害事象〈特徴と対策〉[伏木邦博]
Q34 免疫チェックポイント阻害薬の終わりどき,他剤への切り替えのタイミング[伏木邦博]
〈忘れてはならない〉 化学療法による有害事象② シスプラチン関連血栓塞栓症[横田知哉]
頭頸部癌の治療体系は近年ますます複雑化している。特に再発・転移頭頸部扁平上皮癌では,治療のパラダイムシフトにより,標準治療がめまぐるしく変わっている。局所進行例では,シスプラチンを併用する化学放射線療法が長きにわたりゴールデン・スタンダードであるが,その管理は決して容易ではなく,多職種連携による支持療法に関する研究も数多く行われてきた。こうした中で,現在の臨床腫瘍学の専門書の多くは,臨床試験の解釈や結果に基づいたエビデンスの紹介に主眼が置かれている。また,薬物療法のレジメン本も数多く出版されてきたが,実践に即した疑問に答えてくれる,いわゆる「かゆい所に手が届く」内容を備えた書物はまだ少ないと思われる。このような現場からの強い要望に応えるべく,本書では,主に非外科的治療にフォーカスを当て,頭頸部癌診療において困った場面に遭遇した場合にどのように対応すべきか,どのように考えながら診療したらよいかを,腫瘍内科医としての立場からまとめることになった。
本書の構成は,疾患や病期別に,「局所進行例の治療」「再発・転移例の治療」「その他の希少癌の治療」「終末期緩和ケア」とし,標準治療が適応できない場合の治療方針決定や,治療に難渋する場合の管理上の対応,まとまった前向き試験が難しい希少疾患に対する治療,腫瘍内科医が積極的に関わるべき,本体治療に付随する支持療法にも重点を置いた。また,従来あまり注目されてこなかった根治治療後の検査のタイミングや,頭頸部emergencyへの対応についても触れた。さらに,「その他のレファレンス」として,遺伝子パネル検査の適応や,患者とのコミュニケーションにおける留意点,社会的資本サービスについても盛り込んだ。なお,本書は実践に即した内容を目指したため,最低限の標準治療は理解されていることを前提とし,単にエビデンスの羅列としないよう心がけた。
本書が,日々の頭頸部癌診療で苦労されている先生方の疑問に少しでも答え,患者さん一人ひとりに合わせた治療戦略を考える上での一助となれば幸いである。
末筆ながら,執筆を快諾頂きました全国の腫瘍医の先生方,そして編集の労をとっていただいた日本医事新報社のスタッフの皆様に御礼申し上げたい。
2021年2月 横田知哉
頭頸部癌の治療体系は近年ますます複雑化している。特に再発・転移頭頸部扁平上皮癌では,治療のパラダイムシフトにより,標準治療がめまぐるしく変わっている。局所進行例では,シスプラチンを併用する化学放射線療法が長きにわたりゴールデン・スタンダードであるが,その管理は決して容易ではなく,多職種連携による支持療法に関する研究も数多く行われてきた。こうした中で,現在の臨床腫瘍学の専門書の多くは,臨床試験の解釈や結果に基づいたエビデンスの紹介に主眼が置かれている。また,薬物療法のレジメン本も数多く出版されてきたが,実践に即した疑問に答えてくれる,いわゆる「かゆい所に手が届く」内容を備えた書物はまだ少ないと思われる。このような現場からの強い要望に応えるべく,本書では,主に非外科的治療にフォーカスを当て,頭頸部癌診療において困った場面に遭遇した場合にどのように対応すべきか,どのように考えながら診療したらよいかを,腫瘍内科医としての立場からまとめることになった。
本書の構成は,疾患や病期別に,「局所進行例の治療」「再発・転移例の治療」「その他の希少癌の治療」「終末期緩和ケア」とし,標準治療が適応できない場合の治療方針決定や,治療に難渋する場合の管理上の対応,まとまった前向き試験が難しい希少疾患に対する治療,腫瘍内科医が積極的に関わるべき,本体治療に付随する支持療法にも重点を置いた。また,従来あまり注目されてこなかった根治治療後の検査のタイミングや,頭頸部emergencyへの対応についても触れた。さらに,「その他のレファレンス」として,遺伝子パネル検査の適応や,患者とのコミュニケーションにおける留意点,社会的資本サービスについても盛り込んだ。なお,本書は実践に即した内容を目指したため,最低限の標準治療は理解されていることを前提とし,単にエビデンスの羅列としないよう心がけた。
本書が,日々の頭頸部癌診療で苦労されている先生方の疑問に少しでも答え,患者さん一人ひとりに合わせた治療戦略を考える上での一助となれば幸いである。
末筆ながら,執筆を快諾頂きました全国の腫瘍医の先生方,そして編集の労をとっていただいた日本医事新報社のスタッフの皆様に御礼申し上げたい。